作者:市川保子 私達は相手が何かしているのを見て、「○○さん、何をしていますか。」とも言うし、「○○さん、何をしているの(ん)ですか。」と言うこともあります。両文の違いは「の(ん)です」があるかないかです。 「の(ん)だ」(会話では「んだ」「んです」になりやすい)は日本人がよく使用するのに、外国人学習者がうまく使えない表現です。私達日本人はどんなときに「の(ん)だ」を使ったり、使わなかったりするのでしょうか。 「の(ん)だ」の基本的な意味は、「説明を与える」、疑問文では「説明を求める」ということです。 そして、「の(ん)だ」で重要なことは、文脈、状況と結びついて使われることです。 次の2文はいつ使うか考えてみましょう。 (1) 雨が降っている。 (2) 雨が降っているんだ。 (1)は、たとえば、外を見て単に「雨が降っている」という事態を述べているだけです。一方、(2)は、人が傘をさしているとか、ぬれた傘を持って部屋に入ってきたなどという、状況があって、それを見て(それを知って)「雨が降っている」という事情を説明する(ここでは納得する)言い方です。 疑問文についても同じことが言えます。 (3)その本はおもしろいですか。 (4)その本はおもしろいんですか。 (3)は単にその本がおもしろいかどうかを尋ねています。しかし(4)は、相手が夢中で読んでいるとか、いつも持ち歩いているという状況を見て、それなら「おもしろいのか」と説明を求めたり、確認をしたりする言い方です。 「の(ん)だ」は次のような形で使われることが多いです。 1. 説明 例:道が込んでいる。きっと事故があったのだ。(前文が事態、後文がその説明) 2. 主張 例:それでも地球は丸いのだ。 3. 言い換え 例:彼女は人のものを何でもほしがる。要するに彼女は子供なのだ。 4. 帰結 例:変な男がうろうろしていた。だから犬がほえたのだ。 1~4の他に、次のように命令を表すこともあります。 5. 命令 例:さっさと寝るんだ。 疑問文では、ある前提・状況があって、「説明を求める」「確認をする」というのが本来の用法ですが、「問いただし」や「とがめ」の意味になることもあります。 (5)こんな時間にどこへ行くんですか。 (6)まだあの女に会うんですか。 「の(ん)だ」の接続を次に示します。
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