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『银之镇魂歌』全日语对白
作者:未知  文章来源:互联网  点击数  更新时间:2005-09-24  文章录入:admin  责任编辑:admin
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逝くさ、なのみの正義を振りかざし、人としての道義も朽ち果てる。
逝くさ、第一を揺るがす軍馬の蹄鉄は地獄の亡者の咆哮であった。
策略と関係による、裏切り、そのはての混沌、尽きることのないやぼうはそこなしの憎をいざない、
きょうきが人を蝕み、そして、深深と魂さえもえぐる。そんな血なまぐさい戦いの火中から頭角を現し、またたくまに他を制圧し、後に近隣諸国はゆえに及ばず、遠く北はラツカ、東はルーデン、西のカナンのハテまでもその名をとどろかせ、ジオウの覇王とおそれられたアスランゲイルから数えて七代目、父ギジェット母シアグクが相次いでみまかり、グルシアン·ゾルバ·ラソレルはあまかの期待ようになって、15の若さでジオウ皇帝を即位した。
そして二年後、媚を嫌い、よにおもねず、わが定めはわが手で切り開くごうきと共に、ししおおルシアンはその日、17歳の誕生日を迎えた。

〔人々の騒ぐ)
女の一人:さあさあ、急いで急いで、今夜はルシアン様の17かめのご誕生祝いのご宴席です、
     手を休めているお暇はありませんよ。

少年A :どうしてルシアン様好きの僕たちまで、ぎんぱようみがいたりしなきゃならないだろう。

少年B:そうだよな。こんなの高級のじじょうの仕事じゃないか

少年C :キラのやつが悪いんだよ。頼まれると何でも「ハイハイ」って引き受けてしまうんだから。

少年E :あいつルシアン様にちょっと可愛がられているからって生意気だよ。
     元あらつかのしかんのちつぢかなんだか知らないけど、ここじゃただの父なし子のくせに、

少年F :そうそう、いくらキラの母上がルシアン様の乳母だったからって、
     それだけにこしょうにたてられるなんて、ずるいよな

少年G :あいつ、母上がなくなってから、誰もうしろ盾がいないだろう、
     だからなんとかルシアン様に取り入ろうとして必死なんだよ、きっと。


女の一人:ああ、キラ、食台はこちらに。

キラ  :これで、よろしいでしょうか。

女の一人:結構よ。では、後も同じように頼みましたよ。

キラ  :はい、分かりました。

アスナス:キラ。

キラ  :あっ、アスナス様。なにか?

アスナス:陛下のお姿が見えぬが、どこに行かれたか知っておるか

キラ  :ルシアン様は遠乗\\\\\\\りにお出かけになられました。

アスナス:またか、今日だけはお控えになられるようあれほどお願いしておいたというのに。
     まったく、困ったことだ。それで、とものものは誰だ、デイランとサマラか?

キラ  :はい。そのように伺っております。

アスナス:あやつらめ、帰ってきたらもう一度きつくしかっておかねばなるまい


ルシアン:あぁ、うまい、生き返るようだ。
     このあたりまでくると、さすがに大気のにおいも違うな

サマラ :ルシアン様、もうそろそろお戻りになられませんと

ルシアン:なんだ、サマラ
     来たばかりで、もう帰る心配か

サマラ :なにぶん、日が傾きかけておりがすれば

ルシアン:構わん
     どうせやることはいつもと同じだ

デイラン:ですが、いろいろお支度も終わりでしょうし
     後でまた女官庁どのにくどくどと叱られては構いませぬ

ルシアン:お前もだれぞに似て、だんだん口あかましくなってきたな、デイラン

デイラン:恐れながら、それが近衛のつとえと存じます

ルシアン:毎年毎年
     型にはまって変わりばえのせぬ宴などおもしろくもおかしくないわ
     第一、重臣のじじどもがなにかといえば宴にかこつけてどこぞの姫はどうだろう、
     気にいった娘はいないかなどといらぬ世話ばかりだ、

デイラン:ルシアン様、お腹立ちはごもっともではございますが

ルシアン:私はまだ17だ、やりたいことは山ほどある
     今から幼継ぎを生ませれるための種馬になるつもりなどないわ

サマラ :このご気性だ
     重臣方の気持ちもわかぬわけではないが、
     毎回成功法のごりょうしでは反発するなというのが無理なのだ
     まあ、とにかく
     アスナス様の特大の雷を落ちる前にそろそろお帰り願わねばな

ルシアン:だが、まあいい
     じじどもがそのつもりなら、二度と余計な口をたたけぬよ
     今宵こそきっちりそのはなをあけしてくれるわ


(人人騒ぐ)
シャガルラの国の陛下より、バハード産牝馬十頭·······

デイラン:おお、これはまた見事な仏頂面だな

ジェナス:なにがだ、デイラン

デイラン:なんだ、ジェナス、お前が宴席に顔を出すなど珍しいではないか
     今夜もまた部屋に閉じこもって、
     怪しい丸薬作りに製を出しているとばかり、思っていたのに

ジェナス:たまにはうまいものを食べて
     じおうをつけないとな
     この宴のかたがたほどでもないが
     すしも対外の勝負なのでな
     で、誰が見事な仏頂面なのだ?

デイラン:ルシアン様がだ

ジェナス:なるほど、確かに

デイラン:遠乗\\\\\\\りから戻られて、湯浴みの間中ずっとキラをあいてにぐちっておられたそうだな

ジェナス:如何ルシアン様でも、退屈な無視だけは苦手なのだろう

デイラン:退屈が講じて、爆弾発でも飛び出さねばいいんだろうな


キラ  :ルシアン様、お酒をお持ちいたしました

ルシアン:そう言えば、キラ、お前からはまだ祝いの品をまらってはおらんな

キラ  :あっ、はい、なにかお望みのものでもございますか?

ルシアン:望めば、なんでもくれるのか?

キラ  :はい、できます限りは。ルシアン様のためならちょっとくらい無理をしてもいいかな
     だって13になったばかりの僕、こしょうに推挙してくださったのはルシアン様だもの

ルシアン:そうか?では、お前の操をもらおう

キラ  :おっ?

ルシアン:望めば何でもくれる、と言ったぞ、よいな

キラ  :でも

アスナス:お酔狂もほどほどになされませ
     とぎをお召しでしたら、女官長を命じて、だれぞを選んではべられます

ルシアン:私はキラがほしいと言ったのだ、そのほうらが選んだお式製の娘など何の興味もないわ

アスナス:ならば、ほかのごしょうにんなされませ
     かりにもキラは乳兄弟です、ルシアンさま

ルシアン:それがどうした?アシアが私の乳母だったからといって、何のはばかりがある?

アスナス:ですが

ルシアン:くどいぞ、アスナス
     今宵のとぎにどうでもキラを出せぬとごねるなら、今後一切奥には行かぬ
     種馬ではないからな、私は。どうする?アスナス?
     私はどちらでも一向に構わぬのだぞ


キラ  :どうししょう?どうししょう?ここまで来てまさか逃げ出すわけにはいかないし
     女官長のシリール様はルシアン様のお言葉のままにとおっしゃったけれど
     でも、僕は何を、どうすればいいんだろう

ルシアン:〔笑い出した〕どうした?キラ?
     いつまでも扉の前にへばりついたままで、誰も取って食いはせぬぞ
     じじどもがふたことめには何やかやと、うるさく言うのでな
     一発かましてやったのだ、見たか、アスナスのあの苦虫の噛み潰したようなつらを

キラ  :じゃ、やっぱり、あれはいつものお戯れだったんだ

ルシアン:ここにこい
     あのようなさけの席であんな風にお前を出しに使うつもりはなっかたのだ、すまん

キラ  :いいえ、ルシアン様のお役に立てたのなら僕はうれしいです
     お誕生祝いの品は改めて何か

ルシアン:誰でもよかったわけにはないぞ
     望めば何でもくれるとお前が言ったからだ
     私はこのまま戯言で終わられるつもりはないのだ

キラ  :ルシアン様

ルシアン:なぜだろうな
     お前のことを思うと、血が騒ぐ、体中の血がうずいて、眠れなくなる
     キラ

キラ  :い、いぃや

ルシアン:キラ、何も怖いことはない

キラ  :で、では、お放しください、お願いでございます

ルシアン:私は嫌いなのか

キラ  :いぃえ、で、でも、あの

ルシアン:ならば、お前の目も唇も、この銀の髪も全て私のものだな
     私のものになるということはな、キラ
     これを、こうして
     ?可愛がってもらうことというのだ、キラ、キラ


アスナス:ルシアン様はまたキラを慎重にいりぐたっているのか?
     いったいシリール殿は何をやっているのだ


シリール:見目麗しい娘を選んでとぎに差し出しても見る気もなされないのですよ
     そんなことをすればまるで当てつけるように何日もキラに慎重にこもってしまわれて
     これ以上何をどうせよとおっしゃるのですか


キラ  :誰になんと言われてもいぃ
     僕はただルシアン様のそばにいて、ルシアン様と同じものを見ていたい
     このデアファールカ以外に僕の家はなく、ちつぢを頼るみうちもいない
     そんな僕をルシアン様だけが必要だといって下さる
     ならば、僕は心をこめてお使えしたい
     でついづ、おごらず、よこしまなよくにながされることなく
     その以外、何も望みがしないから


ルシアン:互いのひとみに移るおもいは深く激しく
     何の打算もないというところか
     はじめは口うるさいだけの重臣方に対するただのあてつけだとばかりおもっていたのだが
     なんとも厄介なことになってしまったものだ


人間、誰しも欲得ずくで人を愛するわけではなかろう、周りはどうあがいても
日彼がわずにはいられない、そんな運\\\\\\\命としか言いようのない出会いも確かにあるのだから


キラ  :体を重ねてささやくぬつごと、甘美の酒と同じだ
     幾度酒付きを重ねても尽きることはあるまい
     だが、美酒のみ過ぎれば毒になる
     だからといっていまさら誰がそんな説教がましい台詞を口にできるというのだ
     いったい誰が


ルシアン:お前がよい、キラ
     お前だけでよい
     お前しか要らない


デイラン:どうした、キラ
     16にもなってそんなへっぴり腰では情けないぞ
     もっとわけがしめろう
     いこみあまい
     右、左、いいんじゃない、ほら、足はもっと速く

ジェナス:おお、意気込みが違うとさすがにのみこみがはやいな
     少しは様になってきたのではないか

サマラ :よいのか、ジェナス
     弟子たちが薬草つみにせいを出しているというのに
     こんなところで膏を売っていても

ジェナス:そう言う、お前はどうなんだ、サマラ
     懐刀早々をかってにであるっては執務を届こうって
     陛下がお困りになるのではないか

サマラ :そのルシアン様が様子をみて来いとのおうせいでな
     口出しはせぬとおっしゃられていない
     ご自分で足を運\\\\\\\ばれるのははばかられるらしい

ジェナス:なるほど
     うちにみなまきずの絶える間がなければ
     いかにルシアン様といえども気が気ではないというところか

サマラ :己のことで
     ルシアン様に余計な負担はかけたくないというキラの気持ちも分からぬではないだな

ジェナス:それも仕方あるまい
     何しろ、この三年ルシアン様のご寵愛を薄れるどころか
     ますます深くなるばかりだ
     そうなればまたそれを嫉む妬くなも多くなる
     デイランがいうように
     今のうちにきっちりとしたぼうごんの技をえとくしておいたほうが賢明だろう

サマラ :ルシアン様にしてみればいたしっかいをしっというところなのかも知れぬだな

ジェナス:ぬくぬくとまわたて包まれて愛されるよりも
     まず、自分の足できっちりと立っていたい
     それがキラの男として、いや、人間としての矜持なのではないか

サマラ :だが、ジェナス、人の心を時ともに移り行くというものだ
     私はそれがうらめにでた時のことを考えると
     ぞっとする

デイラン:ほらほら
     めをそろすな、たっているぞ
     まだまだだな、キラ

キラ  :申し訳ありません

デイラン:次はみをぐぬちだな
     同じ時間にくればいい

キラ  :はい、ありがとうございました


ルシアン:キラ

キラ  :ルシアン様、もう、、、、、、

ルシアン:まだ、まだだ

キラ  :ルシアン様


ルシアン:きつかったか

キラ  :いぃえ

ルシアン:1月もお前に触れなかったのは始めだったな
     手加減できなかった

キラ  :それで淡いかかでございました

ルシアン:今のところ大事ないが、あそこのとりでは西の要でもある
     目は常に光らせて置かねばなるまいな

キラ  :では、またいらっしゃるのですか

ルシアン:いや、とりあえずアジマを差し向けようとおもっている

キラ  :ア、アジマどの、でごさいますか

ルシアン:なんだ、アジマを知っているのか

キラ  :あっ、はい。デイラン殿の代わりに結構つけていただきましたので

ルシアン:そうか?ならば、デイランと違って、少しは手加減をしてくれただろう

キラ  :このやのかたがたは皆さんはみっちりしごいてくださいます
     おかげで、ようさくさまになってきたと誉めていただいておりますが

ルシアン:だが、怪我をせぬよう、ほどほどにな、
     お前のこの手は、剣を持つより竪琴をつま弾くほうがずっと似つかわしい

キラ  :アジマ殿はソリテガに、
     まさかルシアン様はイリス様とアジマ様のうわさをご存知なのでは


少年H :しいたのいずぎで、イリス姫様とアジマ殿が口付けなさってたらしい

少年I :なになにに、ご姫の縁談の話もでておろうこの大事なときに
     身ほど知らずによほどが
     陛下のお耳に入りでもしたら、どうするつもりなのだ

女A  :身分違いの恋など、不幸の始まりでございますのに
     でもやはり、おちつぢは争えませんだわね
     まさかイリス姫様まで道ならぬ恋にみようやきになられるとは


キラ  :いや、ご存知はないはずだとおもうけれど
     でも、このままではきっといつか


キラ  :今ごろイリス様はサドリアンで
     でもほんとにこれでよかったのだろうか

イリス :分かっています
     この思いがかなうはずはないのだと分かっているのです
     でも、分かってはいっても、どうにもならないの
     キラ、あなたなら私の気持ちもわかってくれるでしょう

キラ  :わが身のことを思えば、
     いまさら差し出がましい口など聴けるはずもないのはよく分かってはいるけれど

イリス :だから、せめて夢でいいのです
     それよりほかの何も望んではいけないのなら
     ひと時な甘い夢をみていたいのです

キラ  :ひと時の甘い夢か
     若美につまされるようですよ

イリス :お願い、キラ
     今夜遅くにはもうあの方はジオウを発ってしまわれるの
     だから、最後にもう一度だけ、お願い
     サドリアンでお待ちしておりますと、あの方に伝えて

キラ  :イリス様


ルシアン:そうか?モリガンはアドリア伯爵の末の姫を娶るのか?

デイラン:はい、少し年のひらきがございますが、なかなかの熱愛ぶりにございます

キラ  :ルシアン様だ

ルシアン:ああやつもとうとう年貢の納めるときのようだな

デイラン:そのようです

ルシアン:まあ、めでたいことには違いない
     乾杯の酒の一杯でもほしいところだな

サマラ :では、このまま久々にサドリアンまでいらっしゃいますか、ルシアン様

ルシアン:そうだな、それは悪くはあるまい

キラ  :あぁ、大変だ。サドリアンの方へいかれてしまう
     何とか、何とかしなくては


キラ  :イリス様、イリス様、イリス様、キラです

イリス :どうか、したのですか

キラ  :ルシアン様はおいでになります、もうはやく

イリス :えっ?兄上様が

キラ  :アジマ殿がお先に帰れたのか、よかった

イリス :キラ

キラ  :さ、参りましょう

イリス :キラ、待って、もう走らないわ

キラ  :イリス様、もう少しです
     この茂みをぬければ
     何?あっ?

サマラ :なにやつだ?キラ?イリス様?こんな夜更けにいったい二人で何を

デイラン:サマラ、しておろう

ルシアン:デイラン、どうした?

デイラン;あっ、いぃぇ、それは

ルシアン:キラ?何をしている?イリス?

キラ  :ルシアン様

イリス :兄上様

ルシアン:お前たち、どういうことだ
     これは


イリス :知られてしまうわ、兄上様に、全て知られてしまうわ、どうすればいいの

シリール:ルシアン様、お待ちください、ルシアン様

ルシアン:うるさい、道路をさがっておれ

ルシアン:ソレル王家の姫をいつから遊び女如きになさったのだ、イリス

イリス :キラ、キラ、助けて、お願い

ルシアン:いつからだ、キラとはいつからきち繰りあったのかと聞いている

イリス :兄上様

ルシアン:イリス

イリス :お願い、キラ、助けて、助けて、兄上様にうまくとりなして、お願い、お願いよ、キラ

ルシアン:なけば許されるとおもうな、イリス、お前もキラと一緒に牢につながれたい
     裏切りは絶対許さない、覚悟しておけ


ルシアン:闇にまぎれてイリスとサドリアンで合びきとは、な
     飼い犬に手を噛まれるとはこういうことか
     私の目を盗んでようもうやってくれたものだ
     
     始めてとぎをめいじた時、お前はまぐあいないみすら知らなかったな、キラ
     あらから三年、お前の身も心も全て私のことだとおもっていたが
     まさか、いまさらお前に女が抱けるとはおもはなんだが

キラ  :違う、ルシアン様、お願いです

ルシアン:なぜだ、たえろ、デイラン、たえろ、ばかげてこんなことは許されることではない


サマラ :ことは既に動き出してしまったのか
     いまさら後戻りはできぬ
     われらは大儀面分のためにキラを見殺しにするのだからな

アスナス:よいな
     もとはといえば、姫の軽はずみがぐごうがまねいたこともてんまつだ
     この際姫にも、それなりの土牢をかぶっていただく

デイラン:しかし、それではあまりにキラがいったい何の落ちとかあるというのですか

アスナス:大事の前のしょうじだ、そのような瑣末なことなど構っている暇はない

デイラン:一人の一生の問題がなぜ瑣末のことなのです

アスナス:今までも、そしてこれからも、キラがおそばにはげっている限り、
     ルシアン様はどれほど美しい姫に身にあっても目もくれまい
     今年二十歳も過ぎたというのに、妻を娶るどころか、女子の肌にも触れぬご寵愛ぶりだ
     このままではソレル王系の血が絶える

サマラ :そのために、イリス様ともどもキラを身ごろしい生をとうせいですか

アスナス:そうだ、今はまだその兆しはないにしても、
     この先キラの存在がせいどうを左右するしごりになるやも知れぬ
     ならば、禍根の根はたっておぶのが進化としての当然のつとめであろうが

サマラ :そのためならば、人としての両親は捨ててもよいと

アスナス:二つがならびたたぬなら、両親を捨てても大儀をとらねばならぬ
     決断とはそう言うものだ

デイラン:人の道にはずれた大儀であってもですか

アスナス:大儀は大儀だ、それ以外の何者でもない
     いずれごごんぎが整えばイリス様はこの国から出て行かれるご身分、ならば
     ジオウの輝く将来のためにキラにはどうでも捨石になってはもらわねばならぬ
  
サマラ :それで、心にどれほどの傷を残そうともですか

アスナス:傷は時とともにいつか癒えるものだ

サマラ :傷はいつか癒えるか、みさきに誓いごろじんはいともかいたにいってくれるものだ
     そんな保証がいったいどこにあるというのだ


ルシアン:イリスと二人してようもう裏切ってくれたものだ
     ただせめころすだけでも飽きたらぬか

キラ  :イリス様、僕の言葉をもうルシアン様の心には届きません
     だから、お願いです、ここにいらしてください
     どうかルシアン様の前で、はっきりおっしゃってください

ルシアン:二度と女を抱かぬようにしてくれる

キラ  :サドリアンでのことはただの勘違いだろうと、
     イリス様の口からどうか真実をおっしゃってください

ルシアン:私を欺いたその目をつぶして、その口が二度と戯言を吐かぬよう
     したを切り落としてくれるか
     その上でどこぞのいんばい宿にでも売り飛ばしてやろう
     目も見えず口が聞けずども男をくわえこむしりのあなひとつあればよかろう
     いんばいにはそれが似合いだ

キラ  :まさか、どうして信じてはくださらないのです
     ならばいっそう死ねとおっしゃってください
     それすら許されるとおもわれるなら、すべて、今ここで僕を殺してください
     愛しています、イリス様を愛しています、命をかけて愛しております
     イリス様とそいどけることができないのならば、この命惜しいとはおもいませぬ

ルシアン:この下種が

キラ  :愛しています、心のそこからイリス様を愛しています

ルシアン:黙れか、イリスのためなら命もいらぬというなら、僕は切り捨ててくれるわ

デイラン:ルシアン様、剣を、おおさめください

ルシアン:放せ

デイラン:ルシアン様

キラ  :愛しています、愛しています、愛しています

ルシアン:サマラ、キラをだまらせろ、だまれ

キラ  :ルシアン様

ルシアン:デイラン、ジェナスを、ジェナスを呼んで来い


衛兵A :どこへなりとうせろ、頭のご命令だ、
     こんなことをいってもただの気休めにしかならないのだろうが
     命があっただけ運\\\\\\\がよかった、そう思うことだ


キラ  :ジオウの都だ
     はぁ、二年ぶりだ
     あぁ、ほんとにかえってきたんだ


古より全ての物語は人と人の出会いに始まる、
出会うことの喜びとよきせいの分かれの悲しみがよくもあしくも時を刻んでいくよう
真実は偽りをはらい、偽りの中に真実は潜み
わずかに根ずれた愛をはざまで定めの扉はゆうるると開かれるのだろう
物語が始まる、人のようの悲喜こもごもが心を震わすその時に物語は始まる
愛の明朗をさまようものたちへ静かなるべくいえのコメット


キラ  :ジオウの都は相変わらずににぎやかだな

某女A :まあ、な、出目ごとな銀の髪だろう、お日様に透けてキラキラでかば焼いているようだよ

某男A :吟遊詩人かよ

某男B :それにしちゃうきれいなずらしてあがるぜ

某男A :おう方、どこかのぼずっら貴族のなれの旗だったりするんだろうかな
     まったく、もったいねい

某男C ;ほう、11弦の竪琴とはこれはまた珍しい
     ここらじゃめったにおがめんしろうもんだい


キラ  :昼前にはつけるかな
     あっ?だれ?
     マデリア宮殿の衛兵にもこんな森の奥まではめったに入ってこないはずなのに

ルシアン:マイラ、待って、またるか

キラ  :まさか

マイラ :ルシアン様

キラ  :ルシアン様

ルシアン:まったく、しょうのないやつだな
     シリールに知られたらどうする?
     またこごとをくらうぞ

マイラ :もうなれました

ルシアン:そうだな
     私もお前のそう言うかざらのところが好きだ

マイラ :私の方がもっと、ずっとお深くしておりますのに

ルシアン:マイラ

キラ  :何を、いまさら
     未練げに分かりきったことではないか

ルシアン:さあ、もどろうか

マイラ :はい

キラ  :どんなに深くえぐられたキスも側らに愛する人があれば
     いつかいえるものなのかもしれない
     ルシアン様、二年ぶりのジオウの都の風景は何も変わってはいません
     けれど風のにおいさえ昔のままなのに
     歳月は確かに流れているのですね
     ほんとに、もう、縁の欠片ものこってはいないのだと
     母上、長い間墓参りを欠かして、申し訳ありません
     今の僕は気ままなその日暮の歌うたいです
     たて頃のめいしであられた母上のまねごとで
     昔、ほんの手慰みをおぼえたことが今ごろになって役にたつなんて 
     おもってもみませんでした
     ご無沙汰のお詫び代わりにひとさわり聞いていただけますか
     あっぁ?イリス様、デイラン殿、なぜ

イリス ;いつ、戻って、来たのですか

キラ  :母上の好きだったサラデイーナの花束
     あぁ、そうか、今日は母上のつきちがいの命日だった

イリス :キラ、わたくしは

キラ  :そうですね
     あのころは日々の幸せがいつまでも続くものだとおもっていたけれど
     これも母上のお導きでしょうか
     イリス様、多分これで二度とお目にかかることはないとおもいますが
     どうそおすこやかに言葉を交わさぬ無礼は何どうぞご容赦ください

デイラン:姫、参りましょう

イリス :笑って頂戴、デイラン
     キラが足元に膝まついて許しをこうこうとさえできなかったわ


キラ  :ナーマの森は静かだな
     星に手が届きそうだ
     僕はただ静かに眠れる場所を求めてジオウに戻って来ただけなのに


ルシアン:誰でもよかったわけではないぞ、キラ
     望めばなんでもくれるとお前が言ったからだ
     なぜだろうな、お前のことをおもうと、どうしようもなく血がうずいて、眠れなくなる
     お前は私のものだ、お前だけでよい、お前しか要らぬ


キラ  :今夜は眠れそうにない


亭主  :お前様方、何なさるね

サマラ :ここの地酒でももらおうか

亭主  :はいよ

サマラ :ルシアン様のごすいきょうにも困ったものだ
     狩場によくついでとはいえ
     こんな浜の片田舎まで足を伸ばさせるとは
     近頃都で
     何かとうわさの吟遊詩人がほんとにここに住み着いているのかどうかも分からぬと言うのに

ルシアン:ところで、亭主、うわさの吟遊詩人はここにも顔を見せるのか

亭主  :みよ、ま、ありゃえいれいがわりもんだよ
     普段はめったにここまでにおいでこねぃ
     くいもんがなくなるとやってきて
     裏の広場で歌を聞かせるだ
     まったく商売する気があるんだかねいんだか

ルシアン:おう?ではうわさはやはりうわさでしかないということか

亭主  :そんなことはねい、都の耳やどうだかしらねいが
     飲み代削ってかねを払っても惜しくねいな

ルシアン:胸の奥底まで染み入るようだ
     いったいどんな男なのか
     キ、キラ
     サマラ、あれをここに引きずって来い

サマラ :なにぶんの人目がございますれば
     その気はいかがと

ルシアン:くびになわうっててもだ

サマラ :はい
     るすいも非礼も重々承知の上で頼みたい
     少しばかり時間をさいてはくれまいか
     わが主がぜひにと

キラ  :サマラ殿
     では、ルシアン様も
     参りましょう


〔人々騒ぐ〕
サマラ :おうせいのとうり、連れてまいりました

ルシアン:どの面下げてお前戻ってきた
     いんばいくずれが吟遊詩人の気取るなど吐き気がするわ
     即刻ジオウから出てうせよ
     二度は言わぬ次はその腕えし折ってくれるぞ、よいな


キラ  :まさか、こんな田舎町でルシアン様とはちあわせをしようとはおもわなかった
     運\\\\\\\命と言う厄病神はとことん容赦がな
     あっ、あ、あ、あ、胸が
     ルシアン様、僕にはもう失うものなど何もありません
     今はただ静かに眠れる場所がほしいだけなのです


アスナス:サマラ、ルシアン様がキラにお会いにされたというのはまことのことか

サマラ :はい、例のうわさの吟遊詩人を一目ご覧になりたいと
     それがまさかキラだとは予想だにしておりませんでした

アスナス:うわさの出から察するに七のつき前というところか

デイラン:いえ、5のつきです
     私がイリス様のおともで、墓地へ出かけたおり、偶然キラに遭いました

アスナス:馬鹿者、なぜもっとそれをはやく報告せぬのだ、

ワイデル:デイラン、そのようなことでこのえたいちょうどうして面目が出すとおもっておるのか
     たばけものめが

デイラン:いまさら、ことをあらだてる必要もないとおもいましたので

アスナス:キラの存在自体がことをあらだてる現況に決まっておるのではないか

デイラン:では二年ぶりに母親の墓前リに帰ってきたキラになわをうって
     即刻たたきだすべきだとおっしゃいますのか
     いかにルシアン様のご命令とはいえ
     あのようなこと私は二度とごめんです

アスナス:もうよい
     起こってしまったことを今さら悔やんでも遅いわ
     二人ともさがっておれ

デイラン:では

サマラ :失礼いたします

デイラン:チエー、くそうじじどか
     いまさらしわずら突合せて議論してなになる
     納得いく答えなどできるものか

サマラ :そうかっかするな

デイラン:そういうお前はどうなんだ、サマラ
     できれば不安の目ははやめにつんでおきたいとおもってはいるかな
     説くくらわばさらまでだ
     それよりイリス様はどんなご様子だ

サマラ :ほそい食はますます細くなられたようだ
     イリス様付きしっと女官のアズリ殿が心配しておられた

デイラン:ま、それも無理もあるまいかな
     正直な話、まさかあんなところでキラに再会しようとはおもわなかった
     配布をえぐられたかとおもったぞ
     イリス様にして見れば針のむしろであったのよう

サマラ :それは私も同じだ、

デイラン:無様だな。キラが戻ってきたというだけでみな慌てふためいている
     過去をむしかえされるのではないか、とな

サマラ :そうだな
     
デイラン:だが、いまさらすねに傷を持つみよなげいても始まるまい
     アジマが己の罪を償う覚悟でソリテアに骨をうずめるというのなら
     私たちも一連托生だ、闇に封じたものは二度と暴かれてはならぬのだから


ルシアン:吟遊詩人だとキラめ、なにをみせてくれるか


マイラ :ほんとにここのおはな畑はいつみてもきれい
     次から次にいろんなはなが咲いて
     こんなにきれいなんですもの
     少しぐらいいただいても構わないよね

アズリ :マイラ様、なにをなさっているのです

マイラ :アズリ様、あ、あのう、お花をいただくこととおもって

アズリ :一番咲きのレイファンはこんなに
     なんと言うことをなさるのです
     ここの花はイリス様が丹精をこめてお世話になさっているのですよ

マイラ :ごめんなさい
     あまりにきれいなので、つい

アスリ :つい、ついではございません、
     一番咲きのレイファンはイリス様の乳母であられたアシア様の墓前にお供えするのだと
     姫様がそれにお大事になさっておいででしたのに

イリス :アズリ、そんなに声をあらげるものではありません
     レイファンならまだたくさんあるのですから

アズリ :ですが、イリス様は

マイラ :申し訳ありません
     イリス様のお花畑とは存じませんでした
     近頃、ルシアンのご機嫌があまりよろしくないようなので
     きれいなお花でも飾って慰めできればとおもいまして

イリス :そう、兄上様の
     でも兄上様はきっとここのお花はみなおきお嫌いでいらっしゃるわ
     特にそのレイファンは

マイラ :えっ?

イリス :兄上様のお部屋に飾るのなら、ジャノの花園からお花を摘んでいてはいかが?
     今なら、ココレトの盛りですから

マイラ :でも、あのう

アスリ :マイラ様、私が舎の花園にご案内いたしますので
     レイファンは私はお預かりいたします
     どうぞ、ついでいらっしゃってくださいませ

マイラ :では、イリス様、失礼いたします

イリス :びっくりさせてしまったかしら
     でも、レイファンがだめなの
     だってレイファンはキラが一番すきだった花ですもの


キラ  :デイラン殿

デイラン:夜分邪魔をする

キラ  :どうぞ、なかへ

デイラン:用件だけ言わせてもらおう
     明日の夜、王宮でうたぎが催されることになった
     ルシアン様の婚約者であられるマイラ様の誕生祝もかねて、盛大にな
     ジオウの都の内外から芸人をまねえての祝宴だ
     その席に、うわさが高いハマーの吟遊詩人のうたを是非にとのごしょうもうだ

キラ  :宴の余興に満座にさらし者になれとおうせいですか
     そのような戯言をよく重臣方が許しになられましたね

デイラン:許すもゆるさぬもない
     ルシアン様のご気性ならば、お前もよく存知でいよう
     キラ、ハマーを出てこのアテイカの町にながれても、しょせん同じことだ
     ジオウの都にとどまる限り、ルシアン様のめを逃れることができぬ

キラ  :つまにどの望まれたかたがいらっしゃるのに
     それでもまだなぶっりたりない、とでも

デイラン:ルシアン様のお心のうちはルシアン様でなくてわからぬ
     だから、キラ、このごにをよんでこんなことを頼めたぎりはないのだが
     ルシアン様がなにをおっしゃられても何とか穏便におさめてくれまいか
     マイラ様はなにもご存知ないのだ

キラ  :それはルシアン様がお決めになられることです、デイランどの
     満座のさらし者になっても僕にはもうなにも失うものなどないのですから


次はハマーの吟遊詩人でございます

イリス :キラ

シリール:キラですわ

アスナス:なんだ、どうなっているのだ

マイラ :なに?どうしたの?

キラ  :このたびは田村のおたげにお招きにあずかり、身に余る光栄に存じます

ルシアン:いまさら、見えついた追従なぞいらぬわ
     それより、なにを聞かせてくれる

キラ  :ごしょうもんがございすれば、何なりと

ルシアン:そうよな、ならば、パレリア哀歌でもやってもらおうか

デイラン:イリス様もご隣席されでおられるというのに
     よりんともいったいなぜ

マイラ :それならば、私も存じております、
     イニスワヌこんぎのしぎられた姫がそれでもなお恋人を忘れられず
     一目をしのんでおうせいをかさねてしまうという悲しい歌ですわね

サマラ :何も知らぬということとは
     それはそれで結構むごいものなのだな
     これではどちらにころんでもすくわれぬ

ルシアン:そうだ、それで最後には二人とも嫉妬に狂った夫にころされてしまうのだ
     まあ、自業自得ではあるがな

キラ  :かしこまりました

ルシアン:なぜだ あやつが犬猫にも劣る下種のはずなのに
     どうしてこの場の誰よりも美しく輝いて見えるのだ

ルシアン:さすがよな、あいも変わらず人をたらしこむすべだけはたけておるわ
     お前のようにあるじももたず、ひとつところに身を落ち着けもせずに流れ行く吟遊詩人を
     ルアールと呼ぶそうだな

キラ  :はい

ルシアン:そのルアールの中には歌よりも体で稼ぐやからがおるときいたが
     お前の一夜の寝はいくらだか

アスナス:陛下
     そのように一人にだけ長々とおこよはげられては他のものにしめしがつきません
     どうぞ、そのぐらいになっさて

ルシアン:いくらだと聞いておる
     いんばいくずれがいまさら気取ることはあるまいが
     それともなにか
     男であれ、女であれ、抱かれてさえおればかねはいらぬか
     イリス、お前もさぞかくやしいかろうが、
     二年前お前のためならば命もいらぬとごうごうした男が今ではこの様よ

マイラ :えっ?イリス様とこの方が

ルシアン:どうだ?あいそうが尽きたか?それとも、懐かしさのあまりそのみがうずいて声も出ぬか

アスナス:陛下、お戯れが過ぎます

ルシアン:どうだ?キラ
     いっそうのことを今宵お前を買い切ってだれぞに命じて腰がたたなくなるまでだかさて見るか
     それもいっきょうな

キラ  :ご容赦ください
     おうせいのごとく今はその日暮のルアールにございます
     私如きでせんのものをあいてに戯言もすぎればおなにかかわりましょう

ルシアン:ジオウの帝王たる面目など遠の昔につぶれておるか
     飼い犬に手を噛まれた男の阿呆ずらを天下にさらしてきたのだ
     いまさらないて惜しむなどもったおらぬわ
     下種には下種の生き様があろう
     竪琴が二度と持てぬその腕を切り落としてくれようか

キラ  :それで陛下のお気が済まれるのですか

ルシアン:つらのかわもだいぶ厚くなったようだ
     まあ、いい
     人思いあっさりけりをつけたんだ
     酒の肴にもならぬわ
     それよりじゅわりじゅわりとまぶりころしてくれる

キラ  :いいえ、ルシアン様
     二度目はないのです
     僕は二年前のあの夜に死んでしまいました
     後はこの身がただの土くれに戻る日を待つだけ
     それものそれほど先にことではないでしょうか
     ではこれにでさがらせていてもよろしいでしょうか
     
     まだ、まだだ、あの扉の向こう、向こうまで
     ルシアン様の目の届かぬところまで
     ここまでくればもう


サマラ :ジェナス、どうだ、キラの様子は

ジェナス:一応わな、落ち着いたようだ

サマラ :一応とは、どういうことだ

ジェナス:この先、同じことがおきぬという保証はないということだ
     心の臓がひどくやられているようだ
     発作もこれがはじめではあるまい、おそらく

ジェナス:イリス様

イリス :入っても構いませぬか

ジェナス:どうそ、お入りください

イリス :キラが倒れたそうですね

ジェナス:大事ありません
     緊張が過ぎての立ちくらみでしょう
     僕の部屋で休んでおります

イリス :そう、ですか

ジェナス:ちょっと様子を見てまいりましょう

ジェナス:なぜ、こんなことに

キラ  :ここ、ジェナス殿

ジェナス:気分はどうだ

キラ  :おてつをおかけして、申し訳ありません

ジェナス:丸薬を作っておいた
     二つ部だ
     忘れずにのむのだぞ

キラ  :ありがとうございます

ジェナス:これにこりて、あまり無理はせぬことだ

キラ  :分かっています
     でも今のうちにかせいで置かないと、冬が越せません

ジェナス:それはそうだろうが

キラ  :大丈夫です
     春はまだ遠い先のことですから

ジェナス:まさか

キラ  :ナイヤスの花吹雪を見たくて戻ってきたのです
     あれはほんとに見事で、どこに行っても夢に見ましたから

ジェナス:気づいているのか

キラ  :まるで一面うつくれないの花が舞い散れようで
     あの花吹雪の中で静かに眠れたならどんなに幸せだろうかと

ジェナス:違う、そうじゃない

キラ  :お気づきになられたのでしょう
     僕はもうそんなに長く生きてはいられない
     多分、次の夏は望めないと

ジェナス:そんなことはない
     じおうのあるものを食べて、静かにようじをすれば、元気になる

キラ  :そうですね
     お心使い感謝いたします

ジェナス:そうやって全てを許してしまえるまでお前はいくのちをはくような絶望をかみ締めたのだ
     キラ、いいのか、それでほんとにお前はいいのか


アズリ :イリス様、ぐっすりお休みになられるようにおごうたいでおきましょう

イリス :ねえ、アズリ、体の中に流れる血は犯した罪の重さだけよどんで黒\\\\\\\くなるというけれど
     ほんとなのかしら

アズリ :えっ?なんとおっしゃい、、、

イリス :赤いわ、なぜ、どうしてこんなに赤いのかしら
     おかしいとはおもわない、ねえ、アズリ

アズリ :イリス様、違う、違う、お手が血まみれです
     イリス様、たけを、たけをお放しください

イリス :私は恥知らずな罪人なのに、どうして私の血はこんなにあかいのかしら

アズリ :誰が、誰が

イリス :私がキラをころしてしまうのですね

キラ  :お気づきになられたのでしょう
     僕はもうそんなにながくは生きてはいられない
     多分次の夏は望めないと

イリス :私がキラをころしてしまうのです

サマラ :イリス様
     イリス様のたいがたい気もちはサマラ重々承知しております
     身の置きどの朝はわれらにとって同じでございます
     しかし、一時のじょうにながされて
     心を緩めてしまえばうそで固めた壁におもわぬひび割れが生じてしまいます
     さあすれば

イリス :サマラ、あまたの美しい姫気味には目もくれず
     兄上様がなぜああもうマイラをいとわしく思いやそばすのか
     あなたはそのわけを知っていますか

サマラ :はぁ?

イリス :キラに似ているからです

サマラ :それは

イリス :マイラはキラに似ていてよ、見かけよりも、もっとずっと深いところで
     なのに、どんなに愛し合っていても
     キラには許されなかったことが兄上様のおこううめるというだけで
     マイラには全てが許されるのですね
     神様が人間を作られるときひとつの魂を半分にちにって
     二つの体に封印されるのだそうです
     それゆえに、割かれた魂は痛みに震え、かけた半分もほしいと求め
     互いが互いが悲しいほどに呼び合うのだそうです
     サマラ、あなたがそれをただの夢物語だとおもいますか

サマラ :イリス様
     ルシアン様は一人の男であられる前に、
     このジオウの帝王であらせられます

イリス :分かっています
    ジオウの帝王であらせられます兄上様だからこそ
    その運\\\\\\\命の相手にキラであってはならないと
    誰もがそうおもうのでしょう
    けれど、みんなの目の前でキラを辱めて憎むことしかできない兄上様は
    とてもおつらそうでした
    これで永遠にキラを失ってしまったなら
    兄上様がどうになるでしょう
    サマラ、ついになるで気魂は半分に避けたままでは生きてはゆけないのだと私はおもいます

サマラ :それでも、一度うそでやみに封じたものは二度と暴かれてはならないのです

イリス :そうですね
     わが身をのろって、過去をくやんでも、
     それはただの自行憐憫でしかないのかもしれません
     ならば、私は、この眼をそらさずしっかりと自分の犯した罪の深さ追い届けようと思います

サマラ :一生がかけて、つな抜きとおさねばならないうそがある
     国のゆくせいをうれうちゅうぜつからでた大儀の妙の振りかざし
     じょうのかけられ抜くキラを切り捨てたあの時からうそは一生消えぬ烙印どなったんだ
     なのに、われらはその重みの痛みもぬくぬくとしたひびの暮らしにながされて
     忘れ去ろうとしたのだ
     だとしたら、これは神がわれらに下されたてっついではなかろうか
     ねじ負けたうそがゆうがんではじけるほどがする
     今りんさやばかれてはならぬ覚悟
     きばをむいてもともとに暗いついていたとき
     われらはそれを塗りきれるのだろうか


アスナス:マイラ様途中は、うばれておるな

サマラ :イリス様がアッシュのズール公へこしにいれなされているから
     後宮がすでにマイラ様付きの女官が仕切っております
     来る春べきにはルシアン様とのご婚儀もひかえて
     マイラ様にとってはまさにわがよの春でございましょう

アスナス:うん、陛下がわずか15才のズール公のもとへ姫を嫁がされるといい出されたときは
     みんなさすがに驚かせきな覚醒なんだが

ルシアン:ジオウにとって条件よい縁談というのはな、アスナス
     イリスの婚儀でなにを得るかではなく、
     そのことでこれ以上何も損なわぬということだ
     はちのぬわのりをしおって、あのばかめか

アスナス:しかし、まさか姫があのようには最後承諾なされるとはな

イリス :承知いたしました
     兄上様にはおほねおりくださって
     お礼の申しようもございませんと伝えてください

サマラ :ご婚儀の姿はそれは見事のものでございましたな
     それぬの姫としてご自格と気品にあふれておられました

アスナス:後は陛下とマイラ様のご婚儀まで何事もなく時を数えるまでじゃ
     それで、キラのほうがどうなっておる

サマラ :今はナーマのおりのばん小屋に
     そこで冬を越すものと思われます

アスナス:やはりおのかのか

サマラ :せめて春まで
     それはキラにとっては最後の願いでありましょうから

アスナス:できることなら
     この先このレアファールカに明るい笑い声は絶えぬことを祈りたいものだ


マイラ :ほんとにすごいことでございますね、ルシアン様
     あんなところにも蛇使いが

ルシアン:王城の祭りは後三日もある
     それほど気に入ったのならまた明日もつれてきてやろう

マイラ :ほんとでございますか

ルシアン:ああ
     明日はなにかお前が好きな
     竪琴のね、キラか

マイラ :ルシアン様、どうかなさったのですか

ルシアン:デイラン、マイラをつれて先に戻っておれ
     サマラ、お前もだ

マイラ :ルシアン様


キラ  :まだまだだな
     後三日
     稼げるうちに稼いでおかなければジオウの冬は越せない
     春になれば、ルシアン様は妻を娶られる
     でも僕は、未練なのか
     ルシアン様

ルシアン:相変わらず物乞いまがいの日銭かせにか
     そうまでイリスのそばにへばりついていたいのか

キラ  :人間の残り火などしょせんこんなものなのかもしれない

ルシアン:なにがおかしい
     まただんまりか
     いつまでもそのてが通用すると思うなよ、キラ

キラ  :なにを、どう申し上げても陛下の沖に触るのであれば
     口をつぐんで目をそらすいない
     すべはありません

ルシアン:口をつぐんで、かたるすべがないのなら
     そのくち、この手でこじ開けてくれるわ
     お前の大事なイリスはな、あの宴の後浅はかに手首を切ってはたようとしおった

キラ  :うそだ
     そんな、まさか

ルシアン:わが身をいくらなぶなれてもも痛くも寡欲もないが
     イリスのこととなれば、そうやってお前は顔色が変えるのか、キラ
     ならば、その顔がもっとゆがませてくれるわ

キラ  :おやめください
     ルシアン様、ルシアン様、お願いです
     ルシアン、、、

ルシアン:なけわめけ、取りつましたぞ、つらの顔は、おもさもむしにとってくれるわ
     いいぞ、キラ、もっと、もっとだ
     この声もイリスにイリスにも聞かせてやりたいわ


キラ  :サマラドの

サマラ :すまぬな、キラ
     留守中悪いと思ったが、中で待たせたもらった

キラ  :どうして、ここが

サマラ :その気になれば、たやすいことだ

キラ  :僕はそれほどに目障りなのですか

サマラ :ひどい顔だな

キラ  :喧嘩です、ただの

サマラ :身勝手は重々承知のうえで頼みたい
     これでジオウの都から出ていてはもらえまいか

キラ  :いまさらではありませぬか
     僕は何も望んではいません
     ただ静かに暮らしたいだけなのです
     なのに、だれもだれもよってたかった顔をむしかえそうとなさる

サマラ :それは無垢して方らのお前の生き様があまりにもせんれつ過ぎるのだ、キラ
     われらのお夢をきりきりえぐってあまりにあるほどにな
     ルシアン様はジオウにとって唯一国の帝王であらせられる
     その玉座はひとつきいたが、愛情の対象などいくらでもすげかえがきく
     憎しみも心の傷も時がたてば癒えるものだと
     われらはそう思い上がってしまったんだ

キラ  :サマラ殿
     今さら過去をむしかえしても時間はもとには戻りません
     春になれば、そう、春になれば
     何もかもは全てまるくおさまってしまうはずです

サマラ :春になれば、か


ルシアン:まさか、あの時の傷が
     この、下種が
     黙れるか
     あんな、人前では二度と裸をされせぬようなむごたらしい傷になっていたとはな
     私は、私は、そんなことさえ忘れてしまっていたのか


ルシアン:無理をするな、マイラ

マイラ :申し訳ございません

ルシアン:薬湯をしっかり飲んで
     ゆっくり体を休めていろ
     そうすればすぐによくなる

マイラ :はい


ルシアン:ジェナス、ジェナス、おらぬのか
     留守か
     マイラのぐあいは聞こうと思ったが
     それにしてもあきれるほどの書物だな
     俺ではどこになにがあるのか分からぬではないか
     おお、これはまた美しいふばこだな
     ジェナスも案外すみにおけるな
     なに、これはアッシュズ-ル公の紋章ではないか
     なぜこんなものがここに
     イリスからの手紙
     イリスがジェナスになに用だ

イリス :親愛なるジェナス、書こうかやめようか迷いながらしたためております
     文字の乱れは心の迷いとどうぞお許しください
     私はこうして筆をとったのはどうしてもあなたにお願いしたいことがあったからなのです

ルシアン:願い、サマラでもデイランでもなく、なぜジェナスなのだ

イリス :いまさら、申し訳もないことですが、
     二年前のあの時私は兄上様のお怒りがただただ恐ろしく
     たったひとごとがどうしてもいえませんでした
     キラにはただ一度あの方への託を頼んだだけなのだと

ルシアン:なに?

イリス :キラはどんなにか私を恨み、憎をしたことでしょう
     そんな私を愛していると叫ぶキラのこえは
     まるで兄上様にころしてくれと哀願しているようにさえ聴こえたのです

ルシアン:うそだ

イリス :わが身可愛さに真実に口をつぐんでしまった私はこの世で生きていく価値もない
     卑怯ものに成り下がってしまいました
     なのに、みんなは言うのです
     これは神のお導きなのだと
     兄上様がジオウの帝王たるにふさわしい姫を娶り
     お子を生すことがそれるのなお告ぎたのものの義務であると
     そのためにはキラの存在はあってはならないのだと

ルシアン:馬鹿な、うそだ

イリス :サマラはいましたうぞでねじまけた真実はそれが偽りの真実であったとしても
     将来貫きとうさなくてはならないと
     それが真実を揺らがせキラを見捨てた私たちのつとえであると

ルシアン:なぜ?どうして?こんな馬鹿なことがあってたまるか

イリス :けれど、どうぞお願いです
     キラを一人でしないでください
     次の夏は望めないほどに体を病んでいるのなら
     どうか、たった一人でさびしくいかせないで

ルシアン:キラ、うそだ

イリス :あなたにはあなたのお立場があることはよく存じております
     それでもどうぞお願いです
     せめて春まで
     キラが夢にまでというナイアスの花吹雪が舞う春まで
     どうかキラを守ってください  
     おろかな私、最初で最後のお願いです
     兄上様の憎しみがキラの命をちぢませないよう
     キラをまもってください


アスナス:ワイデル、いらいらと歩きもあるのはいいがげんやめぬか

ワイデル:なにを言うか
     陛下がすべてどしてしまったのだぞ
     座ってなぞいられるものか

アスナス:それで、サマラ
     どんなご様子だ

サマラ :分かりませぬ
     誰も入ってはならぬとのきつぢご命令なので

アスナス:しかし、もう三日になるのだぞ
     何とかならぬか


マイラ :ルシアン様、マイラでございます
     お食事をお持ちいたしました
     ルシアン様

デイラン:やはりマイラ様でもだめか

ジェナス:デイラン、ルシアン様は

デイラン:相変わらず引きこもられたままだ
     なにかあったのか

ジェナス:ルシアン様、ジェナスです、ルシアン様

ルシアン:キラになにかあったのか

ジェナス:風をこじらせまして、かなりあぶのうございます
     お出ましになられますか

ルシアン:いまさらどのつらさげたらいにいけるのだ
     一言を、ただの一言を信じてやらなかったの
     ののし、辱めた、絶望のチェードをはかせた
     なのに、私はこの手で、キラの背をひきさえたことさら忘れ
     人はいくらで体をおるのかと満座のさらし者にしたのだぞ
     いまさら、いまさら、どんな顔で許しのこえというのだ


ジェナス:今回は何とか持ち直しましたが
     体力が落ちてしまえばそれが命というのなりかねません
     ですが、いくら養生の話を聞き出してもキラはそこまでは世話になれぬと
     くびを縦にふれません

キラ  :ルシアン様

ルシアン:近頃なにやら、ジェナスが足しげく通っているときいたものでな

キラ  :それは

ルシアン:これを着ろ、出かけるぞ
     したくをしろ

キラ  :えっ?

ルシアン:お前を宮廷で召しかかれてやろうというのだ
     歌を聞かせてひぜも稼ぐに限度があろう
     路民はそこをついてしまうようでは
     ジオウの冬は越せぬぞ
     それゆえ、暖かな寝床と食い物を与えてやろうというのだ
     無論、それに宮うだけのことはしてもらうかな

キラ  :せっかくのお話ではありますが

ルシアン:いなとは言わさぬ
     吟遊詩人とはたとえ意に添わぬ酒の席であっても
     こわれればれいを尽くしてはべるのが作法であろう
     それともなにか、宮廷でジェナスと顔をつき合わせては都合のわるいことでもあるのか

キラ  :いいえ、そんな

ルシアン:今となっては、私にはこういうたかびしゃな言い方しかできぬ
     無様なものだ

キラ  :ああ、ルシアン様の愛馬アザムか
     懐かしいな

ルシアン:しっかりつかまっていろ

キラ  :ああ、これは夢だ
     こんな風にアザムの背でもう一度ルシアン様の温もりを感じていられるなんて
     目を開けば、ついえてしまう夢かもしれない
     この先は養生所なるセライム離宮だ
     なぜ、なんとために
     ジェナス殿

ルシアン:ジェナス、後は頼んだぞ

キラ  :どういうことなのですか
     ルシアン様はなぜ僕をここへ

ジェナス:キラ、お前は信じるか
     人知の枠を超えた縁というものを

キラ  :それでは、答えになっていません、ジェナスどの

ジェナス:アッシュへ嫁がれたイリス様がお前のことを大層気に病んでおられてな
     ルシアン様内密に私を手紙をよこされた、長い手紙でな
     イリス様にして見れば懺悔のつもりでもあられたのだろうが
     それがなぜか偶然、いや、私にはそれこそが天のはいざいのようにおもえてならぬのだが
     ルシアン様のお目にふれてしまった

キラ  :そう、ですか

ジェナス:心にめぐり合うためについた魂というのは、周りがどうあがいても
     結局引き合わずにはいられないのだろうな

キラ  :それでも、時の流れに逆らい
     立ち止まるすべはないのです
     それを一番よくご存知なのは
     多分ルシアン様なのかもしれません


マイラ :キラ様
     今日のこの日、私はルシアン様の妻になります
     この夏を望めぬほどにあなたが体がやんでいらっしゃると知ったとき
     私は心底ほっと胸をなでおろしている自分に気づいて、ぞっとしました
     人を愛するということは自分の心の奥底に潜む醜さを知ることなのかもしれません
     ですから、私は正しく前を見据えていようと思います
     ルシアン様の妻になるその自負と誇りにかけて
     私はあなたを乗\\\\\\\り越えいかねばなりません
     ルシアン様を信じ、ともに歩いていくことこそが一番大切なのだと


キラ  :ナイアスのはながきれいだ
     間に合ってほんとによかった

ジェナス:ナイアスのはなが逃げもかけもせぬ
     まだ熱がひいたばかりではないか
     無理をするな

キラ  :お許しをいただけるのをまっていてはそれこぞはなの盛りが過ぎてしまいます

ジェナス:しかし、何も今日、この日を選んででかれることがあるまい

キラ  :では、ジェナス殿は、お二人のために祝福の歌でも歌えとおっしゃるのですか

ジェナス:キラ
     全てを水にながせとはいわない
     しかし、な

キラ  :未練がましいやつと笑ってくださってもいいのですよ、ジェナスどの
     多分僕は
     これからルシアン様とともに歩いていかれるマイラ様に嫉妬しているのかも知れません
     ルシアン様、命があるものが全ていつの日にか形を変えて生まれいずるものだそうです
     死はつぎにめぐり命をくるまでの長い眠り
     そう信じていればこの思いもいつか別の形でかなうものなのかもしれません
     かけた半分の魂、それが僕とあなたの定めならば、いつか、きっと


ルシアン:婚礼の夜だと言うのに、なにか目をさえて眠れそうにもないな
     何だ、あの陽炎のようなものは、人の形のような、キラ
     キラ、キラなのか、キラ
     キラ、どこだ、キラ、うそだ、そんな
     今確かにキラが、キラ


デイラン:これでいいのだろうな

サマラ :は、多分

デイラン:しかし、あのくったくの朝はまるで何ごともなかったのようではないか

サマラ :どちらにせよ、キラの死にとらわれて陰陰めつめつとしたひびを過ごされるよりは
     はるかにましだ

イリス :お願いね、兄上様のこと

マイラ :はい、これから、始まるのです
     何もかも新しく

ルシアン:イリス、途中まで送っていこう

イリス :あのう、兄上様

ルシアン:お前はアッシュへ帰ってしまうとさびしくなるな、イリス

イリス :ああ、兄上様、そんなおじょうそをおっしゃって

ルシアン:なにを言うのだ
     お前がいなくなってしまえば
     もう三人でそろってアシアの墓に詣でることができなくなってしまうのではないか
     キラもきっとそう思っているはずだぞ、イリス

イリス :兄上様、今なんとおっしゃいましたの
     キラがどうしたと

ルシアン:お前がアッシュに帰ってしまうと
     キラもさびしかろうといったのだ
     聞いてなかったのか

イリス :兄上様
     キラはもういません

ルシアン:イリス、なんだ
     戯言のつもりなのか
     キラが私を置いてどこにいくというのだ

イリス :あっ?サマラ、デイラン

サマラ :どうかなさいましたか

ルシアン:いや、イリスがな、突然キラがもうおらぬなどとおかしいことを言い出しておってな
     冗談にしてはちときついぞ、そうは思わぬか
     なんだ、サマラ、お前までそんな怖い顔をして

サマラ :キラが、どこに

ルシアン:アザムの上でまっておるのではないか、先から
     さあ、いこうか
     キラも待ちくたびれておるわ
     デイラン、イリスを馬車に頼むぞ

デイラン:ぞれごとも度か過ぎる

イリス :サマラ

サマラ :大丈夫です、ルシアン様は大丈夫です
     狂ってしまわれたのではない
     ルシアン様はただキラの死と言う現実
     どうでもうけ入れがたいだけなのだ

ルシアン:サマラ、デイラン、先にいくぞ


人の心の無垢をむぞくことは誰にもかなわぬことだ
キラの幻ぃを見ることで全ての浄化をはかられたのか
それともあまりに激しい悔恨とくすぶりつづける思いをいくらでも絡み合って
キラという幻覚を作り出してしまったのか
なにをして幸せと呼ぶのか定かではない
だが、魂の半分をひきちめられたままではただ、いけてはゆけぬのだ

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