作者:市川保子 「海外に行きたい」「デジカメを買いたい」「こんなところに住みたくない」などのように動詞のマス形の語幹(連用形)に「たい」が付いて、話し手の願望を表します。 願望は「宝くじが当たったら、世界旅行したい」のようにかないそうもないものから、「風呂付きのアパートに住みたい」と実現に結び付いたものもあります。 「たい」で注意すべき点は、三つあります。ひとつは「デジカメを買いたい」か「デジカメが買いたい」か、目的語に「を」をとるか「が」をとるかという問題です。 「たい」は「ほしい」と同じく形容詞の性格を帯びているため、「ほしい」が「デジカメがほしい」と「が」をとるように、「買いたい」も「デジカメが買いたい」と「が」をとると考えられてきました。 しかし、最近の調査では、「が」より「を」を使うほうが圧倒的に多いというデータが出ています。目的語には「を」をとり、強調したいとき(感情を込めるとき)「が」をとることが多いようです。 次のように「を」が目的でなく、通過点や出発点を表す場合は「を」をとります。 (1)?高速道路が?転したい。 また、次の場合は「を」をとりやすくなります。 1.主語が誰か混乱が起きる場合 (2)?私は彼が殺したい。 2.目的語と「動詞+たい」の間に語が入るとき (3)?ビールがあびるほど飲みたい。 3.他動性の動詞で、それ自体が長い音節をもつ動詞 (4)?あの柵にこの犬が結び付けたい。 4.従属節(連体修飾節、副詞節)の中 (5)?手紙が書きたい人は申し出てください。 (6)?手紙が書きたかったら、ここに便箋があります。 二つ目の注意点は、「たい」は話し手の願望を表すのであって、「田中さんはりんごが食べたいです」のように他者の願望を表すと、不自然になります。他者の願望をあらわすときは、次のように「そうだ」「らしい」「と言っている」を付ける必要があります。 (7)田中さんはりんごが食べたいそうです。 らしいです。 と言っています。 「たい」の代わりに「たがる」を用いる場合もありますが、「たがる」は「たがっている」としなければならない場合が多く、また、「ほしいという態度を見せている」という意味合いをもつので、意味的なずれが起こることがあるので使用には注意が必要です。 (8)田中さんはりんごを食べたがっています。 (ただし、連体修飾節の中では、他者が主語であっても、次のように「たい」をそのまま使うことができます。) (9)田中さんが読みたい本は今売切れになっています。 三つ目のポイントは、疑問文「食べたいですか」を使うと、相手によっては失礼になることがあります。友達同士なら、「何を食べたい?」と使えますが、上司や年配の人に、「何を食べたいですか」はやはり失礼でしょう。「何を召し上がりますか」とか「何がよろしいですか」を使うようにしてください。 「たい」の活用表は次のようです。 |