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逝くさ、なのみの正義を振りかざし、人としての道義も朽ち果てる。逝くさ、第一を揺るがす軍馬の蹄鉄は地獄の亡者の咆哮であった。策略と関係による、裏切り、そのはての混沌、尽きることのないやぼうはそこなしの憎をいざない、きょうきが人を蝕み、そして、深深と魂さえもえぐる。そんな血なまぐさい戦いの火中から頭角を現し、またたくまに他を制圧し、後に近隣諸国はゆえに及ばず、遠く北はラツカ、東はルーデン、西のカナンのハテまでもその名をとどろかせ、ジオウの覇王とおそれられたアスランゲイルから数えて七代目、父ギジェット母シアグクが相次いでみまかり、グルシアン·ゾルバ·ラソレルはあまかの期待ようになって、15の若さでジオウ皇帝を即位した。そして二年後、媚を嫌い、よにおもねず、わが定めはわが手で切り開くごうきと共に、ししおおルシアンはその日、17歳の誕生日を迎えた。〔人々の騒ぐ)女の一人:さあさあ、急いで急いで、今夜はルシアン様の17かめのご誕生祝いのご宴席です、 手を休めているお暇はありませんよ。少年A :どうしてルシアン様好きの僕たちまで、ぎんぱようみがいたりしなきゃならないだろう。少年B:そうだよな。こんなの高級のじじょうの仕事じゃないか少年C :キラのやつが悪いんだよ。頼まれると何でも「ハイハイ」って引き受けてしまうんだから。少年E :あいつルシアン様にちょっと可愛がられているからって生意気だよ。 元あらつかのしかんのちつぢかなんだか知らないけど、ここじゃただの父なし子のくせに、少年F :そうそう、いくらキラの母上がルシアン様の乳母だったからって、 それだけにこしょうにたてられるなんて、ずるいよな少年G :あいつ、母上がなくなってから、誰もうしろ盾がいないだろう、 だからなんとかルシアン様に取り入ろうとして必死なんだよ、きっと。女の一人:ああ、キラ、食台はこちらに。キラ :これで、よろしいでしょうか。女の一人:結構よ。では、後も同じように頼みましたよ。キラ :はい、分かりました。アスナス:キラ。キラ :あっ、アスナス様。なにか?アスナス:陛下のお姿が見えぬが、どこに行かれたか知っておるかキラ :ルシアン様は遠乗\\\\\\\りにお出かけになられました。アスナス:またか、今日だけはお控えになられるようあれほどお願いしておいたというのに。 まったく、困ったことだ。それで、とものものは誰だ、デイランとサマラか?キラ :はい。そのように伺っております。アスナス:あやつらめ、帰ってきたらもう一度きつくしかっておかねばなるまいルシアン:あぁ、うまい、生き返るようだ。 このあたりまでくると、さすがに大気のにおいも違うなサマラ :ルシアン様、もうそろそろお戻りになられませんとルシアン:なんだ、サマラ 来たばかりで、もう帰る心配かサマラ :なにぶん、日が傾きかけておりがすればルシアン:構わん どうせやることはいつもと同じだデイラン:ですが、いろいろお支度も終わりでしょうし 後でまた女官庁どのにくどくどと叱られては構いませぬルシアン:お前もだれぞに似て、だんだん口あかましくなってきたな、デイランデイラン:恐れながら、それが近衛のつとえと存じますルシアン:毎年毎年 型にはまって変わりばえのせぬ宴などおもしろくもおかしくないわ 第一、重臣のじじどもがなにかといえば宴にかこつけてどこぞの姫はどうだろう、 気にいった娘はいないかなどといらぬ世話ばかりだ、デイラン:ルシアン様、お腹立ちはごもっともではございますがルシアン:私はまだ17だ、やりたいことは山ほどある 今から幼継ぎを生ませれるための種馬になるつもりなどないわサマラ :このご気性だ 重臣方の気持ちもわかぬわけではないが、 毎回成功法のごりょうしでは反発するなというのが無理なのだ まあ、とにかく アスナス様の特大の雷を落ちる前にそろそろお帰り願わねばなルシアン:だが、まあいい じじどもがそのつもりなら、二度と余計な口をたたけぬよ 今宵こそきっちりそのはなをあけしてくれるわ(人人騒ぐ)シャガルラの国の陛下より、バハード産牝馬十頭·······デイラン:おお、これはまた見事な仏頂面だなジェナス:なにがだ、デイランデイラン:なんだ、ジェナス、お前が宴席に顔を出すなど珍しいではないか 今夜もまた部屋に閉じこもって、 怪しい丸薬作りに製を出しているとばかり、思っていたのにジェナス:たまにはうまいものを食べて じおうをつけないとな この宴のかたがたほどでもないが すしも対外の勝負なのでな で、誰が見事な仏頂面なのだ?デイラン:ルシアン様がだジェナス:なるほど、確かにデイラン:遠乗\\\\\\\りから戻られて、湯浴みの間中ずっとキラをあいてにぐちっておられたそうだなジェナス:如何ルシアン様でも、退屈な無視だけは苦手なのだろうデイラン:退屈が講じて、爆弾発でも飛び出さねばいいんだろうなキラ :ルシアン様、お酒をお持ちいたしましたルシアン:そう言えば、キラ、お前からはまだ祝いの品をまらってはおらんなキラ :あっ、はい、なにかお望みのものでもございますか?ルシアン:望めば、なんでもくれるのか?キラ :はい、できます限りは。ルシアン様のためならちょっとくらい無理をしてもいいかな だって13になったばかりの僕、こしょうに推挙してくださったのはルシアン様だものルシアン:そうか?では、お前の操をもらおうキラ :おっ?ルシアン:望めば何でもくれる、と言ったぞ、よいなキラ :でもアスナス:お酔狂もほどほどになされませ とぎをお召しでしたら、女官長を命じて、だれぞを選んではべられますルシアン:私はキラがほしいと言ったのだ、そのほうらが選んだお式製の娘など何の興味もないわアスナス:ならば、ほかのごしょうにんなされませ かりにもキラは乳兄弟です、ルシアンさまルシアン:それがどうした?アシアが私の乳母だったからといって、何のはばかりがある?アスナス:ですがルシアン:くどいぞ、アスナス 今宵のとぎにどうでもキラを出せぬとごねるなら、今後一切奥には行かぬ 種馬ではないからな、私は。どうする?アスナス? 私はどちらでも一向に構わぬのだぞキラ :どうししょう?どうししょう?ここまで来てまさか逃げ出すわけにはいかないし 女官長のシリール様はルシアン様のお言葉のままにとおっしゃったけれど でも、僕は何を、どうすればいいんだろうルシアン:〔笑い出した〕どうした?キラ? いつまでも扉の前にへばりついたままで、誰も取って食いはせぬぞ じじどもがふたことめには何やかやと、うるさく言うのでな 一発かましてやったのだ、見たか、アスナスのあの苦虫の噛み潰したようなつらをキラ :じゃ、やっぱり、あれはいつものお戯れだったんだルシアン:ここにこい あのようなさけの席であんな風にお前を出しに使うつもりはなっかたのだ、すまんキラ :いいえ、ルシアン様のお役に立てたのなら僕はうれしいです お誕生祝いの品は改めて何かルシアン:誰でもよかったわけにはないぞ 望めば何でもくれるとお前が言ったからだ 私はこのまま戯言で終わられるつもりはないのだキラ :ルシアン様ルシアン:なぜだろうな お前のことを思うと、血が騒ぐ、体中の血がうずいて、眠れなくなる キラキラ :い、いぃやルシアン:キラ、何も怖いことはないキラ :で、では、お放しください、お願いでございますルシアン:私は嫌いなのかキラ :いぃえ、で、でも、あのルシアン:ならば、お前の目も唇も、この銀の髪も全て私のものだな 私のものになるということはな、キラ これを、こうして ?可愛がってもらうことというのだ、キラ、キラアスナス:ルシアン様はまたキラを慎重にいりぐたっているのか? いったいシリール殿は何をやっているのだシリール:見目麗しい娘を選んでとぎに差し出しても見る気もなされないのですよ そんなことをすればまるで当てつけるように何日もキラに慎重にこもってしまわれて これ以上何をどうせよとおっしゃるのですかキラ :誰になんと言われてもいぃ 僕はただルシアン様のそばにいて、ルシアン様と同じものを見ていたい このデアファールカ以外に僕の家はなく、ちつぢを頼るみうちもいない そんな僕をルシアン様だけが必要だといって下さる ならば、僕は心をこめてお使えしたい でついづ、おごらず、よこしまなよくにながされることなく その以外、何も望みがしないからルシアン:互いのひとみに移るおもいは深く激しく 何の打算もないというところか はじめは口うるさいだけの重臣方に対するただのあてつけだとばかりおもっていたのだが なんとも厄介なことになってしまったものだ人間、誰しも欲得ずくで人を愛するわけではなかろう、周りはどうあがいても日彼がわずにはいられない、そんな運\\\\\\\命としか言いようのない出会いも確かにあるのだからキラ :体を重ねてささやくぬつごと、甘美の酒と同じだ 幾度酒付きを重ねても尽きることはあるまい だが、美酒のみ過ぎれば毒になる だからといっていまさら誰がそんな説教がましい台詞を口にできるというのだ いったい誰がルシアン:お前がよい、キラ お前だけでよい お前しか要らないデイラン:どうした、キラ 16にもなってそんなへっぴり腰では情けないぞ もっとわけがしめろう いこみあまい 右、左、いいんじゃない、ほら、足はもっと速くジェナス:おお、意気込みが違うとさすがにのみこみがはやいな 少しは様になってきたのではないかサマラ :よいのか、ジェナス 弟子たちが薬草つみにせいを出しているというのに こんなところで膏を売っていてもジェナス:そう言う、お前はどうなんだ、サマラ 懐刀早々をかってにであるっては執務を届こうって 陛下がお困りになるのではないかサマラ :そのルシアン様が様子をみて来いとのおうせいでな 口出しはせぬとおっしゃられていない ご自分で足を運\\\\\\\ばれるのははばかられるらしいジェナス:なるほど うちにみなまきずの絶える間がなければ いかにルシアン様といえども気が気ではないというところかサマラ :己のことで ルシアン様に余計な負担はかけたくないというキラの気持ちも分からぬではないだなジェナス:それも仕方あるまい 何しろ、この三年ルシアン様のご寵愛を薄れるどころか ますます深くなるばかりだ そうなればまたそれを嫉む妬くなも多くなる デイランがいうように 今のうちにきっちりとしたぼうごんの技をえとくしておいたほうが賢明だろうサマラ :ルシアン様にしてみればいたしっかいをしっというところなのかも知れぬだなジェナス:ぬくぬくとまわたて包まれて愛されるよりも まず、自分の足できっちりと立っていたい それがキラの男として、いや、人間としての矜持なのではないかサマラ :だが、ジェナス、人の心を時ともに移り行くというものだ 私はそれがうらめにでた時のことを考えると ぞっとするデイラン:ほらほら めをそろすな、たっているぞ まだまだだな、キラキラ :申し訳ありませんデイラン:次はみをぐぬちだな 同じ時間にくればいいキラ :はい、ありがとうございましたルシアン:キラキラ :ルシアン様、もう、、、、、、ルシアン:まだ、まだだキラ :ルシアン様ルシアン:きつかったかキラ :いぃえルシアン:1月もお前に触れなかったのは始めだったな 手加減できなかったキラ :それで淡いかかでございましたルシアン:今のところ大事ないが、あそこのとりでは西の要でもある 目は常に光らせて置かねばなるまいなキラ :では、またいらっしゃるのですかルシアン:いや、とりあえずアジマを差し向けようとおもっているキラ :ア、アジマどの、でごさいますかルシアン:なんだ、アジマを知っているのかキラ :あっ、はい。デイラン殿の代わりに結構つけていただきましたのでルシアン:そうか?ならば、デイランと違って、少しは手加減をしてくれただろうキラ :このやのかたがたは皆さんはみっちりしごいてくださいます おかげで、ようさくさまになってきたと誉めていただいておりますがルシアン:だが、怪我をせぬよう、ほどほどにな、 お前のこの手は、剣を持つより竪琴をつま弾くほうがずっと似つかわしいキラ :アジマ殿はソリテガに、 まさかルシアン様はイリス様とアジマ様のうわさをご存知なのでは少年H :しいたのいずぎで、イリス姫様とアジマ殿が口付けなさってたらしい少年I :なになにに、ご姫の縁談の話もでておろうこの大事なときに 身ほど知らずによほどが 陛下のお耳に入りでもしたら、どうするつもりなのだ女A :身分違いの恋など、不幸の始まりでございますのに でもやはり、おちつぢは争えませんだわね まさかイリス姫様まで道ならぬ恋にみようやきになられるとはキラ :いや、ご存知はないはずだとおもうけれど でも、このままではきっといつかキラ :今ごろイリス様はサドリアンで でもほんとにこれでよかったのだろうかイリス :分かっています この思いがかなうはずはないのだと分かっているのです でも、分かってはいっても、どうにもならないの キラ、あなたなら私の気持ちもわかってくれるでしょうキラ :わが身のことを思えば、 いまさら差し出がましい口など聴けるはずもないのはよく分かってはいるけれどイリス :だから、せめて夢でいいのです それよりほかの何も望んではいけないのなら ひと時な甘い夢をみていたいのですキラ :ひと時の甘い夢か 若美につまされるようですよイリス :お願い、キラ 今夜遅くにはもうあの方はジオウを発ってしまわれるの だから、最後にもう一度だけ、お願い サドリアンでお待ちしておりますと、あの方に伝えてキラ :イリス様ルシアン:そうか?モリガンはアドリア伯爵の末の姫を娶るのか?デイラン:はい、少し年のひらきがございますが、なかなかの熱愛ぶりにございますキラ :ルシアン様だルシアン:ああやつもとうとう年貢の納めるときのようだなデイラン:そのようですルシアン:まあ、めでたいことには違いない 乾杯の酒の一杯でもほしいところだなサマラ :では、このまま久々にサドリアンまでいらっしゃいますか、ルシアン様ルシアン:そうだな、それは悪くはあるまいキラ :あぁ、大変だ。サドリアンの方へいかれてしまう 何とか、何とかしなくてはキラ :イリス様、イリス様、イリス様、キラですイリス :どうか、したのですかキラ :ルシアン様はおいでになります、もうはやくイリス :えっ?兄上様がキラ :アジマ殿がお先に帰れたのか、よかったイリス :キラキラ :さ、参りましょうイリス :キラ、待って、もう走らないわキラ :イリス様、もう少しです この茂みをぬければ 何?あっ?サマラ :なにやつだ?キラ?イリス様?こんな夜更けにいったい二人で何をデイラン:サマラ、しておろうルシアン:デイラン、どうした?デイラン;あっ、いぃぇ、それはルシアン:キラ?何をしている?イリス?キラ :ルシアン様イリス :兄上様ルシアン:お前たち、どういうことだ これはイリス :知られてしまうわ、兄上様に、全て知られてしまうわ、どうすればいいのシリール:ルシアン様、お待ちください、ルシアン様ルシアン:うるさい、道路をさがっておれルシアン:ソレル王家の姫をいつから遊び女如きになさったのだ、イリスイリス :キラ、キラ、助けて、お願いルシアン:いつからだ、キラとはいつからきち繰りあったのかと聞いているイリス :兄上様ルシアン:イリスイリス :お願い、キラ、助けて、助けて、兄上様にうまくとりなして、お願い、お願いよ、キラルシアン:なけば許されるとおもうな、イリス、お前もキラと一緒に牢につながれたい 裏切りは絶対許さない、覚悟しておけルシアン:闇にまぎれてイリスとサドリアンで合びきとは、な 飼い犬に手を噛まれるとはこういうことか 私の目を盗んでようもうやってくれたものだ 始めてとぎをめいじた時、お前はまぐあいないみすら知らなかったな、キラ あらから三年、お前の身も心も全て私のことだとおもっていたが まさか、いまさらお前に女が抱けるとはおもはなんだがキラ :違う、ルシアン様、お願いですルシアン:なぜだ、たえろ、デイラン、たえろ、ばかげてこんなことは許されることではないサマラ :ことは既に動き出してしまったのか いまさら後戻りはできぬ われらは大儀面分のためにキラを見殺しにするのだからなアスナス:よいな もとはといえば、姫の軽はずみがぐごうがまねいたこともてんまつだ この際姫にも、それなりの土牢をかぶっていただくデイラン:しかし、それではあまりにキラがいったい何の落ちとかあるというのですかアスナス:大事の前のしょうじだ、そのような瑣末なことなど構っている暇はないデイラン:一人の一生の問題がなぜ瑣末のことなのですアスナス:今までも、そしてこれからも、キラがおそばにはげっている限り、 ルシアン様はどれほど美しい姫に身にあっても目もくれまい 今年二十歳も過ぎたというのに、妻を娶るどころか、女子の肌にも触れぬご寵愛ぶりだ このままではソレル王系の血が絶えるサマラ :そのために、イリス様ともどもキラを身ごろしい生をとうせいですかアスナス:そうだ、今はまだその兆しはないにしても、 この先キラの存在がせいどうを左右するしごりになるやも知れぬ ならば、禍根の根はたっておぶのが進化としての当然のつとめであろうがサマラ :そのためならば、人としての両親は捨ててもよいとアスナス:二つがならびたたぬなら、両親を捨てても大儀をとらねばならぬ 決断とはそう言うものだデイラン:人の道にはずれた大儀であってもですかアスナス:大儀は大儀だ、それ以外の何者でもない いずれごごんぎが整えばイリス様はこの国から出て行かれるご身分、ならば ジオウの輝く将来のためにキラにはどうでも捨石になってはもらわねばならぬ サマラ :それで、心にどれほどの傷を残そうともですかアスナス:傷は時とともにいつか癒えるものだサマラ :傷はいつか癒えるか、みさきに誓いごろじんはいともかいたにいってくれるものだ そんな保証がいったいどこにあるというのだルシアン:イリスと二人してようもう裏切ってくれたものだ ただせめころすだけでも飽きたらぬかキラ :イリス様、僕の言葉をもうルシアン様の心には届きません だから、お願いです、ここにいらしてください どうかルシアン様の前で、はっきりおっしゃってくださいルシアン:二度と女を抱かぬようにしてくれるキラ :サドリアンでのことはただの勘違いだろうと、 イリス様の口からどうか真実をおっしゃってくださいルシアン:私を欺いたその目をつぶして、その口が二度と戯言を吐かぬよう したを切り落としてくれるか その上でどこぞのいんばい宿にでも売り飛ばしてやろう 目も見えず口が聞けずども男をくわえこむしりのあなひとつあればよかろう いんばいにはそれが似合いだキラ :まさか、どうして信じてはくださらないのです ならばいっそう死ねとおっしゃってください それすら許されるとおもわれるなら、すべて、今ここで僕を殺してください 愛しています、イリス様を愛しています、命をかけて愛しております イリス様とそいどけることができないのならば、この命惜しいとはおもいませぬルシアン:この下種がキラ :愛しています、心のそこからイリス様を愛していますルシアン:黙れか、イリスのためなら命もいらぬというなら、僕は切り捨ててくれるわデイラン:ルシアン様、剣を、おおさめくださいルシアン:放せデイラン:ルシアン様キラ :愛しています、愛しています、愛していますルシアン:サマラ、キラをだまらせろ、だまれキラ :ルシアン様ルシアン:デイラン、ジェナスを、ジェナスを呼んで来い衛兵A :どこへなりとうせろ、頭のご命令だ、 こんなことをいってもただの気休めにしかならないのだろうが 命があっただけ運\\\\\\\がよかった、そう思うことだキラ :ジオウの都だ はぁ、二年ぶりだ あぁ、ほんとにかえってきたんだ古より全ての物語は人と人の出会いに始まる、出会うことの喜びとよきせいの分かれの悲しみがよくもあしくも時を刻んでいくよう真実は偽りをはらい、偽りの中に真実は潜みわずかに根ずれた愛をはざまで定めの扉はゆうるると開かれるのだろう物語が始まる、人のようの悲喜こもごもが心を震わすその時に物語は始まる愛の明朗をさまようものたちへ静かなるべくいえのコメットキラ :ジオウの都は相変わらずににぎやかだな某女A :まあ、な、出目ごとな銀の髪だろう、お日様に透けてキラキラでかば焼いているようだよ某男A :吟遊詩人かよ某男B :それにしちゃうきれいなずらしてあがるぜ某男A :おう方、どこかのぼずっら貴族のなれの旗だったりするんだろうかな まったく、もったいねい某男C ;ほう、11弦の竪琴とはこれはまた珍しい ここらじゃめったにおがめんしろうもんだいキラ :昼前にはつけるかな あっ?だれ? マデリア宮殿の衛兵にもこんな森の奥まではめったに入ってこないはずなのにルシアン:マイラ、待って、またるかキラ :まさかマイラ :ルシアン様キラ :ルシアン様ルシアン:まったく、しょうのないやつだな シリールに知られたらどうする? またこごとをくらうぞマイラ :もうなれましたルシアン:そうだな 私もお前のそう言うかざらのところが好きだマイラ :私の方がもっと、ずっとお深くしておりますのにルシアン:マイラキラ :何を、いまさら 未練げに分かりきったことではないかルシアン:さあ、もどろうかマイラ :はいキラ :どんなに深くえぐられたキスも側らに愛する人があれば いつかいえるものなのかもしれない ルシアン様、二年ぶりのジオウの都の風景は何も変わってはいません けれど風のにおいさえ昔のままなのに 歳月は確かに流れているのですね ほんとに、もう、縁の欠片ものこってはいないのだと 母上、長い間墓参りを欠かして、申し訳ありません 今の僕は気ままなその日暮の歌うたいです たて頃のめいしであられた母上のまねごとで 昔、ほんの手慰みをおぼえたことが今ごろになって役にたつなんて おもってもみませんでした ご無沙汰のお詫び代わりにひとさわり聞いていただけますか あっぁ?イリス様、デイラン殿、なぜイリス ;いつ、戻って、来たのですかキラ :母上の好きだったサラデイーナの花束 あぁ、そうか、今日は母上のつきちがいの命日だったイリス :キラ、わたくしはキラ :そうですね あのころは日々の幸せがいつまでも続くものだとおもっていたけれど これも母上のお導きでしょうか イリス様、多分これで二度とお目にかかることはないとおもいますが どうそおすこやかに言葉を交わさぬ無礼は何どうぞご容赦くださいデイラン:姫、参りましょうイリス :笑って頂戴、デイラン キラが足元に膝まついて許しをこうこうとさえできなかったわキラ :ナーマの森は静かだな 星に手が届きそうだ 僕はただ静かに眠れる場所を求めてジオウに戻って来ただけなのにルシアン:誰でもよかったわけではないぞ、キラ 望めばなんでもくれるとお前が言ったからだ なぜだろうな、お前のことをおもうと、どうしようもなく血がうずいて、眠れなくなる お前は私のものだ、お前だけでよい、お前しか要らぬキラ :今夜は眠れそうにない亭主 :お前様方、何なさるねサマラ :ここの地酒でももらおうか亭主 :はいよサマラ :ルシアン様のごすいきょうにも困ったものだ 狩場によくついでとはいえ こんな浜の片田舎まで足を伸ばさせるとは 近頃都で 何かとうわさの吟遊詩人がほんとにここに住み着いているのかどうかも分からぬと言うのにルシアン:ところで、亭主、うわさの吟遊詩人はここにも顔を見せるのか亭主 :みよ、ま、ありゃえいれいがわりもんだよ 普段はめったにここまでにおいでこねぃ くいもんがなくなるとやってきて 裏の広場で歌を聞かせるだ まったく商売する気があるんだかねいんだかルシアン:おう?ではうわさはやはりうわさでしかないということか亭主 :そんなことはねい、都の耳やどうだかしらねいが 飲み代削ってかねを払っても惜しくねいなルシアン:胸の奥底まで染み入るようだ いったいどんな男なのか キ、キラ サマラ、あれをここに引きずって来いサマラ :なにぶんの人目がございますれば その気はいかがとルシアン:くびになわうっててもだサマラ :はい るすいも非礼も重々承知の上で頼みたい 少しばかり時間をさいてはくれまいか わが主がぜひにとキラ :サマラ殿 では、ルシアン様も 参りましょう〔人々騒ぐ〕サマラ :おうせいのとうり、連れてまいりましたルシアン:どの面下げてお前戻ってきた いんばいくずれが吟遊詩人の気取るなど吐き気がするわ 即刻ジオウから出てうせよ 二度は言わぬ次はその腕えし折ってくれるぞ、よいなキラ :まさか、こんな田舎町でルシアン様とはちあわせをしようとはおもわなかった 運\\\\\\\命と言う厄病神はとことん容赦がな あっ、あ、あ、あ、胸が ルシアン様、僕にはもう失うものなど何もありません 今はただ静かに眠れる場所がほしいだけなのですアスナス:サマラ、ルシアン様がキラにお会いにされたというのはまことのことかサマラ :はい、例のうわさの吟遊詩人を一目ご覧になりたいと それがまさかキラだとは予想だにしておりませんでしたアスナス:うわさの出から察するに七のつき前というところかデイラン:いえ、5のつきです 私がイリス様のおともで、墓地へ出かけたおり、偶然キラに遭いましたアスナス:馬鹿者、なぜもっとそれをはやく報告せぬのだ、ワイデル:デイラン、そのようなことでこのえたいちょうどうして面目が出すとおもっておるのか たばけものめがデイラン:いまさら、ことをあらだてる必要もないとおもいましたのでアスナス:キラの存在自体がことをあらだてる現況に決まっておるのではないかデイラン:では二年ぶりに母親の墓前リに帰ってきたキラになわをうって 即刻たたきだすべきだとおっしゃいますのか いかにルシアン様のご命令とはいえ あのようなこと私は二度とごめんですアスナス:もうよい 起こってしまったことを今さら悔やんでも遅いわ 二人ともさがっておれデイラン:ではサマラ :失礼いたしますデイラン:チエー、くそうじじどか いまさらしわずら突合せて議論してなになる 納得いく答えなどできるものかサマラ :そうかっかするなデイラン:そういうお前はどうなんだ、サマラ できれば不安の目ははやめにつんでおきたいとおもってはいるかな 説くくらわばさらまでだ それよりイリス様はどんなご様子だサマラ :ほそい食はますます細くなられたようだ イリス様付きしっと女官のアズリ殿が心配しておられたデイラン:ま、それも無理もあるまいかな 正直な話、まさかあんなところでキラに再会しようとはおもわなかった 配布をえぐられたかとおもったぞ イリス様にして見れば針のむしろであったのようサマラ :それは私も同じだ、デイラン:無様だな。キラが戻ってきたというだけでみな慌てふためいている 過去をむしかえされるのではないか、となサマラ :そうだな デイラン:だが、いまさらすねに傷を持つみよなげいても始まるまい アジマが己の罪を償う覚悟でソリテアに骨をうずめるというのなら 私たちも一連托生だ、闇に封じたものは二度と暴かれてはならぬのだからルシアン:吟遊詩人だとキラめ、なにをみせてくれるかマイラ :ほんとにここのおはな畑はいつみてもきれい 次から次にいろんなはなが咲いて こんなにきれいなんですもの 少しぐらいいただいても構わないよねアズリ :マイラ様、なにをなさっているのですマイラ :アズリ様、あ、あのう、お花をいただくこととおもってアズリ :一番咲きのレイファンはこんなに なんと言うことをなさるのです ここの花はイリス様が丹精をこめてお世話になさっているのですよマイラ :ごめんなさい あまりにきれいなので、ついアスリ :つい、ついではございません、 一番咲きのレイファンはイリス様の乳母であられたアシア様の墓前にお供えするのだと 姫様がそれにお大事になさっておいででしたのにイリス :アズリ、そんなに声をあらげるものではありません レイファンならまだたくさんあるのですからアズリ :ですが、イリス様はマイラ :申し訳ありません イリス様のお花畑とは存じませんでした 近頃、ルシアンのご機嫌があまりよろしくないようなので きれいなお花でも飾って慰めできればとおもいましてイリス :そう、兄上様の でも兄上様はきっとここのお花はみなおきお嫌いでいらっしゃるわ 特にそのレイファンはマイラ :えっ?イリス :兄上様のお部屋に飾るのなら、ジャノの花園からお花を摘んでいてはいかが? 今なら、ココレトの盛りですからマイラ :でも、あのうアスリ :マイラ様、私が舎の花園にご案内いたしますので レイファンは私はお預かりいたします どうぞ、ついでいらっしゃってくださいませマイラ :では、イリス様、失礼いたしますイリス :びっくりさせてしまったかしら でも、レイファンがだめなの だってレイファンはキラが一番すきだった花ですものキラ :デイラン殿デイラン:夜分邪魔をするキラ :どうぞ、なかへデイラン:用件だけ言わせてもらおう 明日の夜、王宮でうたぎが催されることになった ルシアン様の婚約者であられるマイラ様の誕生祝もかねて、盛大にな ジオウの都の内外から芸人をまねえての祝宴だ その席に、うわさが高いハマーの吟遊詩人のうたを是非にとのごしょうもうだキラ :宴の余興に満座にさらし者になれとおうせいですか そのような戯言をよく重臣方が許しになられましたねデイラン:許すもゆるさぬもない ルシアン様のご気性ならば、お前もよく存知でいよう キラ、ハマーを出てこのアテイカの町にながれても、しょせん同じことだ ジオウの都にとどまる限り、ルシアン様のめを逃れることができぬキラ :つまにどの望まれたかたがいらっしゃるのに それでもまだなぶっりたりない、とでもデイラン:ルシアン様のお心のうちはルシアン様でなくてわからぬ だから、キラ、このごにをよんでこんなことを頼めたぎりはないのだが ルシアン様がなにをおっしゃられても何とか穏便におさめてくれまいか マイラ様はなにもご存知ないのだキラ :それはルシアン様がお決めになられることです、デイランどの 満座のさらし者になっても僕にはもうなにも失うものなどないのですから次はハマーの吟遊詩人でございますイリス :キラシリール:キラですわアスナス:なんだ、どうなっているのだマイラ :なに?どうしたの?キラ :このたびは田村のおたげにお招きにあずかり、身に余る光栄に存じますルシアン:いまさら、見えついた追従なぞいらぬわ それより、なにを聞かせてくれるキラ :ごしょうもんがございすれば、何なりとルシアン:そうよな、ならば、パレリア哀歌でもやってもらおうかデイラン:イリス様もご隣席されでおられるというのに よりんともいったいなぜマイラ :それならば、私も存じております、 イニスワヌこんぎのしぎられた姫がそれでもなお恋人を忘れられず 一目をしのんでおうせいをかさねてしまうという悲しい歌ですわねサマラ :何も知らぬということとは それはそれで結構むごいものなのだな これではどちらにころんでもすくわれぬルシアン:そうだ、それで最後には二人とも嫉妬に狂った夫にころされてしまうのだ まあ、自業自得ではあるがなキラ :かしこまりましたルシアン:なぜだ あやつが犬猫にも劣る下種のはずなのに どうしてこの場の誰よりも美しく輝いて見えるのだルシアン:さすがよな、あいも変わらず人をたらしこむすべだけはたけておるわ お前のようにあるじももたず、ひとつところに身を落ち着けもせずに流れ行く吟遊詩人を ルアールと呼ぶそうだなキラ :はいルシアン:そのルアールの中には歌よりも体で稼ぐやからがおるときいたが お前の一夜の寝はいくらだかアスナス:陛下 そのように一人にだけ長々とおこよはげられては他のものにしめしがつきません どうぞ、そのぐらいになっさてルシアン:いくらだと聞いておる いんばいくずれがいまさら気取ることはあるまいが それともなにか 男であれ、女であれ、抱かれてさえおればかねはいらぬか イリス、お前もさぞかくやしいかろうが、 二年前お前のためならば命もいらぬとごうごうした男が今ではこの様よマイラ :えっ?イリス様とこの方がルシアン:どうだ?あいそうが尽きたか?それとも、懐かしさのあまりそのみがうずいて声も出ぬかアスナス:陛下、お戯れが過ぎますルシアン:どうだ?キラ いっそうのことを今宵お前を買い切ってだれぞに命じて腰がたたなくなるまでだかさて見るか それもいっきょうなキラ :ご容赦ください おうせいのごとく今はその日暮のルアールにございます 私如きでせんのものをあいてに戯言もすぎればおなにかかわりましょうルシアン:ジオウの帝王たる面目など遠の昔につぶれておるか 飼い犬に手を噛まれた男の阿呆ずらを天下にさらしてきたのだ いまさらないて惜しむなどもったおらぬわ 下種には下種の生き様があろう 竪琴が二度と持てぬその腕を切り落としてくれようかキラ :それで陛下のお気が済まれるのですかルシアン:つらのかわもだいぶ厚くなったようだ まあ、いい 人思いあっさりけりをつけたんだ 酒の肴にもならぬわ それよりじゅわりじゅわりとまぶりころしてくれるキラ :いいえ、ルシアン様 二度目はないのです 僕は二年前のあの夜に死んでしまいました 後はこの身がただの土くれに戻る日を待つだけ それものそれほど先にことではないでしょうか ではこれにでさがらせていてもよろしいでしょうか まだ、まだだ、あの扉の向こう、向こうまで ルシアン様の目の届かぬところまで ここまでくればもうサマラ :ジェナス、どうだ、キラの様子はジェナス:一応わな、落ち着いたようだサマラ :一応とは、どういうことだジェナス:この先、同じことがおきぬという保証はないということだ 心の臓がひどくやられているようだ 発作もこれがはじめではあるまい、おそらくジェナス:イリス様イリス :入っても構いませぬかジェナス:どうそ、お入りくださいイリス :キラが倒れたそうですねジェナス:大事ありません 緊張が過ぎての立ちくらみでしょう 僕の部屋で休んでおりますイリス :そう、ですかジェナス:ちょっと様子を見てまいりましょうジェナス:なぜ、こんなことにキラ :ここ、ジェナス殿ジェナス:気分はどうだキラ :おてつをおかけして、申し訳ありませんジェナス:丸薬を作っておいた 二つ部だ 忘れずにのむのだぞキラ :ありがとうございますジェナス:これにこりて、あまり無理はせぬことだキラ :分かっています でも今のうちにかせいで置かないと、冬が越せませんジェナス:それはそうだろうがキラ :大丈夫です 春はまだ遠い先のことですからジェナス:まさかキラ :ナイヤスの花吹雪を見たくて戻ってきたのです あれはほんとに見事で、どこに行っても夢に見ましたからジェナス:気づいているのかキラ :まるで一面うつくれないの花が舞い散れようで あの花吹雪の中で静かに眠れたならどんなに幸せだろうかとジェナス:違う、そうじゃないキラ :お気づきになられたのでしょう 僕はもうそんなに長く生きてはいられない 多分、次の夏は望めないとジェナス:そんなことはない じおうのあるものを食べて、静かにようじをすれば、元気になるキラ :そうですね お心使い感謝いたしますジェナス:そうやって全てを許してしまえるまでお前はいくのちをはくような絶望をかみ締めたのだ キラ、いいのか、それでほんとにお前はいいのかアズリ :イリス様、ぐっすりお休みになられるようにおごうたいでおきましょうイリス :ねえ、アズリ、体の中に流れる血は犯した罪の重さだけよどんで黒\\\\\\\くなるというけれど ほんとなのかしらアズリ :えっ?なんとおっしゃい、、、イリス :赤いわ、なぜ、どうしてこんなに赤いのかしら おかしいとはおもわない、ねえ、アズリアズリ :イリス様、違う、違う、お手が血まみれです イリス様、たけを、たけをお放しくださいイリス :私は恥知らずな罪人なのに、どうして私の血はこんなにあかいのかしらアズリ :誰が、誰がイリス :私がキラをころしてしまうのですねキラ :お気づきになられたのでしょう 僕はもうそんなにながくは生きてはいられない 多分次の夏は望めないとイリス :私がキラをころしてしまうのですサマラ :イリス様 イリス様のたいがたい気もちはサマラ重々承知しております 身の置きどの朝はわれらにとって同じでございます しかし、一時のじょうにながされて 心を緩めてしまえばうそで固めた壁におもわぬひび割れが生じてしまいます さあすればイリス :サマラ、あまたの美しい姫気味には目もくれず 兄上様がなぜああもうマイラをいとわしく思いやそばすのか あなたはそのわけを知っていますかサマラ :はぁ?イリス :キラに似ているからですサマラ :それはイリス :マイラはキラに似ていてよ、見かけよりも、もっとずっと深いところで なのに、どんなに愛し合っていても キラには許されなかったことが兄上様のおこううめるというだけで マイラには全てが許されるのですね 神様が人間を作られるときひとつの魂を半分にちにって 二つの体に封印されるのだそうです それゆえに、割かれた魂は痛みに震え、かけた半分もほしいと求め 互いが互いが悲しいほどに呼び合うのだそうです サマラ、あなたがそれをただの夢物語だとおもいますかサマラ :イリス様 ルシアン様は一人の男であられる前に、 このジオウの帝王であらせられますイリス :分かっています ジオウの帝王であらせられます兄上様だからこそ その運\\\\\\\命の相手にキラであってはならないと 誰もがそうおもうのでしょう けれど、みんなの目の前でキラを辱めて憎むことしかできない兄上様は とてもおつらそうでした これで永遠にキラを失ってしまったなら 兄上様がどうになるでしょう サマラ、ついになるで気魂は半分に避けたままでは生きてはゆけないのだと私はおもいますサマラ :それでも、一度うそでやみに封じたものは二度と暴かれてはならないのですイリス :そうですね わが身をのろって、過去をくやんでも、 それはただの自行憐憫でしかないのかもしれません ならば、私は、この眼をそらさずしっかりと自分の犯した罪の深さ追い届けようと思いますサマラ :一生がかけて、つな抜きとおさねばならないうそがある 国のゆくせいをうれうちゅうぜつからでた大儀の妙の振りかざし じょうのかけられ抜くキラを切り捨てたあの時からうそは一生消えぬ烙印どなったんだ なのに、われらはその重みの痛みもぬくぬくとしたひびの暮らしにながされて 忘れ去ろうとしたのだ だとしたら、これは神がわれらに下されたてっついではなかろうか ねじ負けたうそがゆうがんではじけるほどがする 今りんさやばかれてはならぬ覚悟 きばをむいてもともとに暗いついていたとき われらはそれを塗りきれるのだろうかアスナス:マイラ様途中は、うばれておるなサマラ :イリス様がアッシュのズール公へこしにいれなされているから 後宮がすでにマイラ様付きの女官が仕切っております 来る春べきにはルシアン様とのご婚儀もひかえて マイラ様にとってはまさにわがよの春でございましょうアスナス:うん、陛下がわずか15才のズール公のもとへ姫を嫁がされるといい出されたときは みんなさすがに驚かせきな覚醒なんだがルシアン:ジオウにとって条件よい縁談というのはな、アスナス イリスの婚儀でなにを得るかではなく、 そのことでこれ以上何も損なわぬということだ はちのぬわのりをしおって、あのばかめかアスナス:しかし、まさか姫があのようには最後承諾なされるとはなイリス :承知いたしました 兄上様にはおほねおりくださって お礼の申しようもございませんと伝えてくださいサマラ :ご婚儀の姿はそれは見事のものでございましたな それぬの姫としてご自格と気品にあふれておられましたアスナス:後は陛下とマイラ様のご婚儀まで何事もなく時を数えるまでじゃ それで、キラのほうがどうなっておるサマラ :今はナーマのおりのばん小屋に そこで冬を越すものと思われますアスナス:やはりおのかのかサマラ :せめて春まで それはキラにとっては最後の願いでありましょうからアスナス:できることなら この先このレアファールカに明るい笑い声は絶えぬことを祈りたいものだマイラ :ほんとにすごいことでございますね、ルシアン様 あんなところにも蛇使いがルシアン:王城の祭りは後三日もある それほど気に入ったのならまた明日もつれてきてやろうマイラ :ほんとでございますかルシアン:ああ 明日はなにかお前が好きな 竪琴のね、キラかマイラ :ルシアン様、どうかなさったのですかルシアン:デイラン、マイラをつれて先に戻っておれ サマラ、お前もだマイラ :ルシアン様キラ :まだまだだな 後三日 稼げるうちに稼いでおかなければジオウの冬は越せない 春になれば、ルシアン様は妻を娶られる でも僕は、未練なのか ルシアン様ルシアン:相変わらず物乞いまがいの日銭かせにか そうまでイリスのそばにへばりついていたいのかキラ :人間の残り火などしょせんこんなものなのかもしれないルシアン:なにがおかしい まただんまりか いつまでもそのてが通用すると思うなよ、キラキラ :なにを、どう申し上げても陛下の沖に触るのであれば 口をつぐんで目をそらすいない すべはありませんルシアン:口をつぐんで、かたるすべがないのなら そのくち、この手でこじ開けてくれるわ お前の大事なイリスはな、あの宴の後浅はかに手首を切ってはたようとしおったキラ :うそだ そんな、まさかルシアン:わが身をいくらなぶなれてもも痛くも寡欲もないが イリスのこととなれば、そうやってお前は顔色が変えるのか、キラ ならば、その顔がもっとゆがませてくれるわキラ :おやめください ルシアン様、ルシアン様、お願いです ルシアン、、、ルシアン:なけわめけ、取りつましたぞ、つらの顔は、おもさもむしにとってくれるわ いいぞ、キラ、もっと、もっとだ この声もイリスにイリスにも聞かせてやりたいわキラ :サマラドのサマラ :すまぬな、キラ 留守中悪いと思ったが、中で待たせたもらったキラ :どうして、ここがサマラ :その気になれば、たやすいことだキラ :僕はそれほどに目障りなのですかサマラ :ひどい顔だなキラ :喧嘩です、ただのサマラ :身勝手は重々承知のうえで頼みたい これでジオウの都から出ていてはもらえまいかキラ :いまさらではありませぬか 僕は何も望んではいません ただ静かに暮らしたいだけなのです なのに、だれもだれもよってたかった顔をむしかえそうとなさるサマラ :それは無垢して方らのお前の生き様があまりにもせんれつ過ぎるのだ、キラ われらのお夢をきりきりえぐってあまりにあるほどにな ルシアン様はジオウにとって唯一国の帝王であらせられる その玉座はひとつきいたが、愛情の対象などいくらでもすげかえがきく 憎しみも心の傷も時がたてば癒えるものだと われらはそう思い上がってしまったんだキラ :サマラ殿 今さら過去をむしかえしても時間はもとには戻りません 春になれば、そう、春になれば 何もかもは全てまるくおさまってしまうはずですサマラ :春になれば、かルシアン:まさか、あの時の傷が この、下種が 黙れるか あんな、人前では二度と裸をされせぬようなむごたらしい傷になっていたとはな 私は、私は、そんなことさえ忘れてしまっていたのかルシアン:無理をするな、マイラマイラ :申し訳ございませんルシアン:薬湯をしっかり飲んで ゆっくり体を休めていろ そうすればすぐによくなるマイラ :はいルシアン:ジェナス、ジェナス、おらぬのか 留守か マイラのぐあいは聞こうと思ったが それにしてもあきれるほどの書物だな 俺ではどこになにがあるのか分からぬではないか おお、これはまた美しいふばこだな ジェナスも案外すみにおけるな なに、これはアッシュズ-ル公の紋章ではないか なぜこんなものがここに イリスからの手紙 イリスがジェナスになに用だイリス :親愛なるジェナス、書こうかやめようか迷いながらしたためております 文字の乱れは心の迷いとどうぞお許しください 私はこうして筆をとったのはどうしてもあなたにお願いしたいことがあったからなのですルシアン:願い、サマラでもデイランでもなく、なぜジェナスなのだイリス :いまさら、申し訳もないことですが、 二年前のあの時私は兄上様のお怒りがただただ恐ろしく たったひとごとがどうしてもいえませんでした キラにはただ一度あの方への託を頼んだだけなのだとルシアン:なに?イリス :キラはどんなにか私を恨み、憎をしたことでしょう そんな私を愛していると叫ぶキラのこえは まるで兄上様にころしてくれと哀願しているようにさえ聴こえたのですルシアン:うそだイリス :わが身可愛さに真実に口をつぐんでしまった私はこの世で生きていく価値もない 卑怯ものに成り下がってしまいました なのに、みんなは言うのです これは神のお導きなのだと 兄上様がジオウの帝王たるにふさわしい姫を娶り お子を生すことがそれるのなお告ぎたのものの義務であると そのためにはキラの存在はあってはならないのだとルシアン:馬鹿な、うそだイリス :サマラはいましたうぞでねじまけた真実はそれが偽りの真実であったとしても 将来貫きとうさなくてはならないと それが真実を揺らがせキラを見捨てた私たちのつとえであるとルシアン:なぜ?どうして?こんな馬鹿なことがあってたまるかイリス :けれど、どうぞお願いです キラを一人でしないでください 次の夏は望めないほどに体を病んでいるのなら どうか、たった一人でさびしくいかせないでルシアン:キラ、うそだイリス :あなたにはあなたのお立場があることはよく存じております それでもどうぞお願いです せめて春まで キラが夢にまでというナイアスの花吹雪が舞う春まで どうかキラを守ってください おろかな私、最初で最後のお願いです 兄上様の憎しみがキラの命をちぢませないよう キラをまもってくださいアスナス:ワイデル、いらいらと歩きもあるのはいいがげんやめぬかワイデル:なにを言うか 陛下がすべてどしてしまったのだぞ 座ってなぞいられるものかアスナス:それで、サマラ どんなご様子だサマラ :分かりませぬ 誰も入ってはならぬとのきつぢご命令なのでアスナス:しかし、もう三日になるのだぞ 何とかならぬかマイラ :ルシアン様、マイラでございます お食事をお持ちいたしました ルシアン様デイラン:やはりマイラ様でもだめかジェナス:デイラン、ルシアン様はデイラン:相変わらず引きこもられたままだ なにかあったのかジェナス:ルシアン様、ジェナスです、ルシアン様ルシアン:キラになにかあったのかジェナス:風をこじらせまして、かなりあぶのうございます お出ましになられますかルシアン:いまさらどのつらさげたらいにいけるのだ 一言を、ただの一言を信じてやらなかったの ののし、辱めた、絶望のチェードをはかせた なのに、私はこの手で、キラの背をひきさえたことさら忘れ 人はいくらで体をおるのかと満座のさらし者にしたのだぞ いまさら、いまさら、どんな顔で許しのこえというのだジェナス:今回は何とか持ち直しましたが 体力が落ちてしまえばそれが命というのなりかねません ですが、いくら養生の話を聞き出してもキラはそこまでは世話になれぬと くびを縦にふれませんキラ :ルシアン様ルシアン:近頃なにやら、ジェナスが足しげく通っているときいたものでなキラ :それはルシアン:これを着ろ、出かけるぞ したくをしろキラ :えっ?ルシアン:お前を宮廷で召しかかれてやろうというのだ 歌を聞かせてひぜも稼ぐに限度があろう 路民はそこをついてしまうようでは ジオウの冬は越せぬぞ それゆえ、暖かな寝床と食い物を与えてやろうというのだ 無論、それに宮うだけのことはしてもらうかなキラ :せっかくのお話ではありますがルシアン:いなとは言わさぬ 吟遊詩人とはたとえ意に添わぬ酒の席であっても こわれればれいを尽くしてはべるのが作法であろう それともなにか、宮廷でジェナスと顔をつき合わせては都合のわるいことでもあるのかキラ :いいえ、そんなルシアン:今となっては、私にはこういうたかびしゃな言い方しかできぬ 無様なものだキラ :ああ、ルシアン様の愛馬アザムか 懐かしいなルシアン:しっかりつかまっていろキラ :ああ、これは夢だ こんな風にアザムの背でもう一度ルシアン様の温もりを感じていられるなんて 目を開けば、ついえてしまう夢かもしれない この先は養生所なるセライム離宮だ なぜ、なんとために ジェナス殿ルシアン:ジェナス、後は頼んだぞキラ :どういうことなのですか ルシアン様はなぜ僕をここへジェナス:キラ、お前は信じるか 人知の枠を超えた縁というものをキラ :それでは、答えになっていません、ジェナスどのジェナス:アッシュへ嫁がれたイリス様がお前のことを大層気に病んでおられてな ルシアン様内密に私を手紙をよこされた、長い手紙でな イリス様にして見れば懺悔のつもりでもあられたのだろうが それがなぜか偶然、いや、私にはそれこそが天のはいざいのようにおもえてならぬのだが ルシアン様のお目にふれてしまったキラ :そう、ですかジェナス:心にめぐり合うためについた魂というのは、周りがどうあがいても 結局引き合わずにはいられないのだろうなキラ :それでも、時の流れに逆らい 立ち止まるすべはないのです それを一番よくご存知なのは 多分ルシアン様なのかもしれませんマイラ :キラ様 今日のこの日、私はルシアン様の妻になります この夏を望めぬほどにあなたが体がやんでいらっしゃると知ったとき 私は心底ほっと胸をなでおろしている自分に気づいて、ぞっとしました 人を愛するということは自分の心の奥底に潜む醜さを知ることなのかもしれません ですから、私は正しく前を見据えていようと思います ルシアン様の妻になるその自負と誇りにかけて 私はあなたを乗\\\\\\\り越えいかねばなりません ルシアン様を信じ、ともに歩いていくことこそが一番大切なのだとキラ :ナイアスのはながきれいだ 間に合ってほんとによかったジェナス:ナイアスのはなが逃げもかけもせぬ まだ熱がひいたばかりではないか 無理をするなキラ :お許しをいただけるのをまっていてはそれこぞはなの盛りが過ぎてしまいますジェナス:しかし、何も今日、この日を選んででかれることがあるまいキラ :では、ジェナス殿は、お二人のために祝福の歌でも歌えとおっしゃるのですかジェナス:キラ 全てを水にながせとはいわない しかし、なキラ :未練がましいやつと笑ってくださってもいいのですよ、ジェナスどの 多分僕は これからルシアン様とともに歩いていかれるマイラ様に嫉妬しているのかも知れません ルシアン様、命があるものが全ていつの日にか形を変えて生まれいずるものだそうです 死はつぎにめぐり命をくるまでの長い眠り そう信じていればこの思いもいつか別の形でかなうものなのかもしれません かけた半分の魂、それが僕とあなたの定めならば、いつか、きっとルシアン:婚礼の夜だと言うのに、なにか目をさえて眠れそうにもないな 何だ、あの陽炎のようなものは、人の形のような、キラ キラ、キラなのか、キラ キラ、どこだ、キラ、うそだ、そんな 今確かにキラが、キラデイラン:これでいいのだろうなサマラ :は、多分デイラン:しかし、あのくったくの朝はまるで何ごともなかったのようではないかサマラ :どちらにせよ、キラの死にとらわれて陰陰めつめつとしたひびを過ごされるよりは はるかにましだイリス :お願いね、兄上様のことマイラ :はい、これから、始まるのです 何もかも新しくルシアン:イリス、途中まで送っていこうイリス :あのう、兄上様ルシアン:お前はアッシュへ帰ってしまうとさびしくなるな、イリスイリス :ああ、兄上様、そんなおじょうそをおっしゃってルシアン:なにを言うのだ お前がいなくなってしまえば もう三人でそろってアシアの墓に詣でることができなくなってしまうのではないか キラもきっとそう思っているはずだぞ、イリスイリス :兄上様、今なんとおっしゃいましたの キラがどうしたとルシアン:お前がアッシュに帰ってしまうと キラもさびしかろうといったのだ 聞いてなかったのかイリス :兄上様 キラはもういませんルシアン:イリス、なんだ 戯言のつもりなのか キラが私を置いてどこにいくというのだイリス :あっ?サマラ、デイランサマラ :どうかなさいましたかルシアン:いや、イリスがな、突然キラがもうおらぬなどとおかしいことを言い出しておってな 冗談にしてはちときついぞ、そうは思わぬか なんだ、サマラ、お前までそんな怖い顔をしてサマラ :キラが、どこにルシアン:アザムの上でまっておるのではないか、先から さあ、いこうか キラも待ちくたびれておるわ デイラン、イリスを馬車に頼むぞデイラン:ぞれごとも度か過ぎるイリス :サマラサマラ :大丈夫です、ルシアン様は大丈夫です 狂ってしまわれたのではない ルシアン様はただキラの死と言う現実 どうでもうけ入れがたいだけなのだルシアン:サマラ、デイラン、先にいくぞ人の心の無垢をむぞくことは誰にもかなわぬことだキラの幻ぃを見ることで全ての浄化をはかられたのかそれともあまりに激しい悔恨とくすぶりつづける思いをいくらでも絡み合ってキラという幻覚を作り出してしまったのかなにをして幸せと呼ぶのか定かではないだが、魂の半分をひきちめられたままではただ、いけてはゆけぬのだ
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