ウサギはお昼寝をしていました。このごろ世の中があまりにも目まぐるしく変化するので、へとへとになっていたのです。カメが通り過ぎるのにも気が付かないくらい、ぐっすりと眠っておりました。 カメは懸命に走っていました。このごろ世の中があまりにも目まぐるしく動いていくので、くたくたになりながらも走っていたのです。でも、とてもイヌのように走り続けるわけにはいきませんでした。 カメは、道ばたの木陰で、すやすや眠っているウサギを見つけました。どんなに自分も休みたかったでしょう。でも、少しでも休むと、世の中からすっかり取り残されてしまいます。カメには養わなければならない家族がおります。この勝負に負けたら、貧乏のどん底になるかも知れないと、怯えていたです。 ウサギはふと目を覚ましました。山の上のほうを見ると、すでにカメがゴール寸前までたどり着いていました。でも、もうあせりはありませんでした。もう少し休む必要があると思いました。 カメは、とりあえず勝負に勝ちました。でも、次のレースが明日に控えておりました。ウサギよりもっと手ごわい、あの、イヌと競争しなければなりませんでした。イヌは疲れを知りません。自分の寿命のことなど考えず、ただひたすらに走り続けることができるのです。カメは、とてもかなわないな、と思いました。 ウサギは、山の中ほどに、家をつくり、家族を呼び寄せました。そして、茶屋を開業しました。走ろうと思えばまだまだ走れます。でも、がむしゃらになることはないな、と思いました。 ウサギの店は、けっこう繁盛しました。カメもときどき足を止めて、一杯の珈琲に舌鼓を打つようになりました。カメはイヌとの競争には、もちろん大敗しました。でも、勤勉で諏gな性格で、私腹を肥やすことなど決してありませんでしたから、今では、推薦されて村長になり、山の動物たちのお世話をして回っています。
カメが言うには、村の収入の多くを、ドッグレースでまかなっているということでした |