ジョーンズ氏:鈴木さん、日本の企業では、意思決定の仕組みにひじょうに特色があると伺っています。これから日本の企業との取引がますます多くなりますので、ぜひそれと教えていただけるとありがたいんですが。 鈴木氏:はい、喜んで。比較的規模の大きな企業では、意思決定は多くの関係者が加わって、集団的方法で行っています。これは稟議制度と呼ばれています。 ジョーンズ氏:稟議制度ですか。それはどんな制度ですか。 鈴木氏:そうですね、ある案件の決裁を受けようとする場合を考えてみてください。まず担当者が原案を原案を文書にまとめます。それを回覧するが持ち歩いて、係長、課長、部長と、つぎつぎ上位者の承認を得ます。また、その案件が他部門と関係があるときは、その関係者があるときは、その関係者からも同意をもらいます。そして最後に決裁者の承認を受けます。 ジョーンズ氏:すると稟議制度は、アメリカのように「トップダウンか方式」ではなく、「ボトムアップ方式」による意思規定方法ですね。決裁者にだれですか。 鈴木氏:決裁者は案件の重要性によって違います。最重要事項は社長が決裁します。比較的に重要な事項は担当取締になります。それ以外は部長が決裁することが多いようです。承認や同意の意思は稟議書に捺印することによって表示するのです。 ジョーンズ氏:決裁者のところまで行く前に、途中で上司や関係者の誰かに意義があれば、どうなりますか。 鈴木氏:実際にはこんなふに進めているのです。稟議書を作る前に、会議を開いたり、関係者に直接説明しに行ったりして、上司や関係者の誰かに異議があれば、どうなりますか。 鈴木氏:その場合には、協議して、必要があれば原案を修正します。もし承認が得られなければ、廃案になります。 ジョーンズ氏:つまり、事前のコンセンサスが成功の鍵というわけですね。 鈴木氏:そうです。日本ではこうした事前の行動を「根回し」と呼んでいます。これはもともと園芸用語なんですよ。木を移植するとき、移植しやすいように、前もって木の周囲を掘って、一部の根をきっておくことなんです。ビジネスでは、何かを行う場合に、前持っていろいろ手をうっておく、という意味に使っています。
ジョーンズ氏:稟議制度には、ほかのシステムと比べてどんな利点があるのですか。 鈴木氏:ふつう3つの利点があります。第一にその案件に関係のある人々の意思を聞き、多くの人が目を通すので、安全な意思決定ができます。第二に、関係者が参画意識を持つので、決定事項を円滑に実実施しやすくなります。第三に、若手社員も提案者として企画に参画するため、企業運営に対する関心が強くなります。 ジョーンズ氏:しかしこの方法では、意思決定までに時間がかかりすぎませんか。 鈴木氏:はい、その点がこの制度の欠点の一つでしょう。また、責任の所在が分散しがちなことも欠点といえましょう。ですから、日本のこうした意思決定方法を知らない外国のビジネスマンが、日本と仕事をしたり交渉をしたりするときに、しばしばいらいらする原因になるようですね。 ジョーンズ氏:まさにすなんですよ。 アメリカの企業では、責任、権限が明確に決まっていて、権限の範囲内であれば、責任者が直ちに決断を下しますからね。それで、日本の企業の内部では、そうして欠点に打ち手はなんか改善する動きはあるのですか。 鈴木氏:はい、最近は多くの企業がシステムを改善しようとしています。国際化が進むとともに、企業間競争も激しくなってきているので、どうしても意思決定のスピードアップを図る必要が出てきているからです。
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