皆がいっせいに昇進するのが年功序列
ジョーンズ氏:鈴木さん、日本企業の人事管理制度についてお伺いしたいんですが。 鈴木氏:分かりました。日本の比較的規模の大きな企業では、長期雇用慣行に基づいて、人事管理制度が組み立てられています。この主用ものが定期採用?定期異動?定期昇給?定年制などです。 ジョーンズ氏:まず、定期採用からお願いします。 鈴木氏:各企業では毎年、その年に大学?短大?高校などを卒業したものを、新入社員として4月にいっせいに採用します。 ジョーンズ氏:しかし、それで欠員のある職位に適した能力を持つ人を採用できるのですか。 鈴木氏:即戦力になる能力を持つものを採用するというアメリカ式の採用とは考え方が違うのです。日本の企業では、多くの場合、欠員のある職位と厳密に対応させて、採用者を決めているわけではないんですよ。 ジョーンズ氏:それで採用をどのようにして決めるのですか。 鈴木氏:各企業では、将来性が期待できる人材を採用します。それから自社にふさわしい意識?能力?意欲を持つ従業員に育成します。それに採用人員は当面の欠員計画や退職者数の見込みなども考え、総合的に決めます。 ジョーンズ氏:そうすると、年齢が増し、勤続年数が長くなるにつれて、給与が高くなりますね。そういうことですか。 鈴木氏:そうです。給与や昇進は、一般的に年功序列的に連用されてきました。これは、日本の企業が長期的な雇用関係を基本としているからです。つまり、職務経験の積み重ねによって職務能力も次第に強化され、企業に対する貢献ども増大するという考え方が前提となっているといってよいでしょう。 ジョーンズ氏:定期昇給では、能力の高い人も低い人も一律に昇給するというんですか。日本の企業の従業員もモラールは非常に高いと聞いていますが、そんな昇給に仕方でなぜモラールが高いんでしょうね。 鈴木氏:昇給額は、個人ごとに能力?将来性などに基づいて、格差がつけられます。ですから、従業員間に競争意識が働き、それが従業員のモラールを高めるのに役立っているんです。 ジョーンズ氏:先ほども年功序列的に行われているというお話でしたね。I 鈴木氏:はい、しかしだれでも一律に昇進するわけではありません。地位の高いポストになればなるほど、年齢?勤続年数が同程度の者のなかから、選ぶにしても能力や業績の高いものが選ばれます。 ジョーンズ氏:その点を私は誤解していました。ところで、何歳で定年になるのですか。 鈴木氏:従来55歳が大部分でしたが、平均寿命の伸びや、年金の受給開始が事実上60歳であることなどから、最近は60歳定年の企業が一般的になっています。 ジョーンズ氏:日本企業の人事管理制度の概要がわかりました。 鈴木氏:もう一つ申しますと、いままでお話したことも、最近は変化しつつまります。例えば、定期採用以外の採用もかなりたくさん行われています。これは主に若者層の減少や、新規事業分野への進出などのために、人材の条件が変動しているからです。また日本経済は低成長期に入っていますので、多くの企業が昇進や休与を決める場合、能力重視の傾向をいっそう強めています。さらに従業員の高齢化や定年延長などによって人件費がかさむことから、年功序列型の給与体系を見直す企業も増加しています。
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