作者:市川保子
●連体修飾節について
「あそこで話している人は小林さんだ」という文は、「あそこで話している」と「その人は小林さんだ」という2文からできています。そして、「あそこで話している」が連体修飾節になって「人」にかかります。連体修飾節と名詞(被修飾名詞)次のようになります。
連体修飾節 名詞
この「連体修飾節+名詞」が文の成分になって、主節の中に組み込まれていきます。
(1)あそこで話している人は小林さんだ。(主語?主題)
(2)あそこで話している人を紹介してください。(目的語)
(3)あそこで話している人からインタビューを始めよう。
(4)小林さんというのはあそこで話している人です。
連体修飾節では用言(動詞?形容詞など)は基本的には普通形をとりますが、「な形容詞」「名詞+だ」は異なります。
また、他の従属節と同じく、主語が「が」をとるか「は」をとるか、節内のテンス?アスペクト(非過去か過去か)などが問題になります。
1)連体修飾節内の用言の形
連体修飾節内の用言は普通形をとります。「な形容詞」「名詞+だ」の非過去?肯定のときに注意が必要です。
(1)いつも元気だ→いつも元気な次郎君が病気になった。
(2)今日休みだ→今日休みの人はだれですか。
2)連体修飾節内の主語
連体修飾節節内の主語は基本的には「が」をとります。
(3)田中さんがきのうデパートで買ったCDを貸してください。
(4)これは父がくれた時計です。
□が連体修飾節で、その中の主語「田中さん」「父」は「が」をとります。
連体修飾節内の主語は「の」をとることもあります。
(5)田中さんの買ったCDを貸してください。
しかし、主語と述語の間に語が多く入るときは「の」は使えません。
(6)?田中さんのきのうデパートで買ったCDを貸してください。
「の」の機能は名詞と名詞をつなぐものなので、主語と述語(動詞?形容詞など)が離れすぎると主述関係がはっきりしなくなるからだと考えられます。
3)テンス?アスペクト
連体修飾節内では「ている」を用いて状態を表す表現がタ形で表されることが多く見られます。
(7)めがねをかけている人→めがねをかけた人
(8)着物を着ている人→着物を着た人
(9)安定している生活→安定した生活
(10)先がとがっているナイフ→先がとがったナイフ
これらの状態を表す「~ている+名詞」「~た+名詞」は主節が非過去でも過去でもその形をとります。
(11)日本にはめがねをかけている人が多い。
かけた
(12)めがねをかけている人に道を聞かれた。
かけた
(7) ‘のように過去の場合は、「~ていた」も使われます。
(7)’めがねをかけていた人に道を聞かれた。
●「連体修飾節+時間?予定?約束」など
今まで述べてきた「連体修飾節+名詞」の関係は、その名詞がもともとは連体修飾節文の要素でした(12)。しかし、ここで取り上げる名詞は連体修飾節文に戻すことができないものです(13)。
(13) 着物を着ている人(←(その)人が着物を着ている)
(14) 忙しくてご飯を食べる時間がない。(?時間がご飯を食べる)
(15) 今日は出かける予定はありません。(?予定を今日出かける)
(16) 彼女とデートする約束をしました。(?約束を彼女とデートする)
日本語にはこのような連体修飾節が多く見られます。
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