作者:市川保子
「外国人が日本語を話す」「(それは)難しい」の2文を合体させると、(1)ができます。
(1)a.外国人が日本語を話すことは難しい。
b.外国人が日本語を話すのは難しい。
このように文が、「こと・の」によって名詞化された節(句とも言う)を名詞節(名詞句)と言います。これを図で示すと次のようになります。
文 こと・の
名詞節
名詞節の中の主語は連体修飾節と同じく「が」で表されます。(?連体 )
「こと」と「の」は多くの場合置き換えが可能ですが、置き換えができないときもあります。
●名詞節「こと」
1)名詞節の中の用言の形
「こと」の前には用言(動詞・形容詞・「名詞+だ」)の普通形が来ますが、「名詞+だ」の非過去・肯定の場合はうしろに「という」が入ります。
動詞 |
い形容詞 |
な形容詞 |
名詞+だ |
行く
行かない +こと
行った
行かなかった |
忙しい
忙しくない +こと
忙しかった
忙しくなかった |
元気な
元気じゃない +こと
元気だった
元気じゃなかった |
休みだという
休みじゃない +こと
休みだった
休みじゃなかった |
(1)生きることは愛することだ。
(2)山田さんが行かないことを知らなかった。
(3)ハイテクの力を借りることで、大幅に時間が短縮される。
(4)明日の授業が休講だということを皆に連絡してください。
(1)では名詞節が主題と述語に、(2)(4)では目的語になっています。また、(3)では名詞節に「で」が付いて「方法」を表しています。
2)「こと」の慣用的用法
「こと」には次のような慣用的な用法があります。これらの「こと」は「の」に置き換えられません。
[1]辞書形+ことにする/ことになる
(5)では、これで会議を終わることにします。
(6)A会社がB会社に吸収合併されることになった。
[2]辞書形+ことがある
(7)気晴らしにときどきパチンコをすることがある。
[3]タ形+ことがある
(8)まだ富士山に登ったことがありません。
[4]形容詞+ことに
(9)うれしいことに、多くの人からメールをもらった。
[5]疑問詞+普通形+こと(だろう)か
(10)子供が元気になってくれたら、どんなにうれしいことか。
[6]普通形+こと。(名詞+のこと)
(11)レポートは来週中に提出すること。(提出のこと)
[7]普通形+ことだ
(12)人の悪口は言わないことだ。
●名詞節「の」
1)名詞節「の」について
「の」の前には用言(動詞・形容詞・「名詞+だ」)の普通形が来ますが、「な形容詞」「名詞+だ」の非過去・肯定には注意が必要です。
動詞 |
い形容詞 |
な形容詞 |
名詞+だ |
行く
行かない +の
行った
行かなかった |
忙しい
忙しくない +の
忙しかった
忙しくなかった |
元気な
元気じゃない +の
元気だった
元気じゃなかった |
休みな
休みじゃない +の
休みだった
休みじゃなかった |
(1)レスリングを見るのが好きだ。
(2)田中さんが入院したのを知っていますか。
(3)漢字を覚えるのはちょっと大変ですよ。
(4)年金が減るのは仕方がないことだ。
(1)では名詞節が主語に、(2)では目的語にまた、(3)(4)では主題になっています。
2)「~の」+知覚動詞
「の」には知覚動詞(見る・見える・聞く・聞こえる・気がつくなど)に結び付いて、何か出来事が起こるのを知覚することを示す表現があります。「の」の前には動詞・「い形容詞」の普通形が来ます。「な形容詞」と「名詞+だ」は「~なの」になります。
(5)きのう山田さんがデパートに入るのを見た。
(6)飛行機が何機も飛んでいくのが見えます。
(7)うぐいすが鳴いているのが聞こえる。
(8)彼女がいつもより元気なのに気がついた。
「~の」+知覚動詞の文では、「の」を「こと」に変えることはできません。
3)強調構文
(9)小林さんはきのう来なかった。
(9)の文の「小林さん」と「きのう」を強調すると、それぞれ(10)(11)ようになります。
(10)きのう来なかったのは小林さんだ。
(11)小林さんが来なかったのはきのうだ。
このように「~のは~だ」という形をとって、一部分を強調する文を強調構文と言います。強調構文では次のように理由も協調することができます。
(12)小林さんが来なかったのは忙しかったからだ。
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