問:
高校『日語』第1冊第17課について
小川:もしもし、小川ですが。丁恵さんはいらっしゃいますか。 丁恵:はい、わたしですが。
下線の部分は「けど」に置き換えられますか。この場合「けど」と「が」の区別を教えてください。
答:
これらの「が」は「けど」に置き換えることもできます。「が」と「けど」の使い方に大きな違いはありませんが、「が」より「けど」のほうが会話的でくだけた感じがします。「が」や「けど」の使い方についてですが、ここでは逆接の意味はありません。
「もしもし、小川ですが」の「が」は、相手に何か働きかける前に前置きとしてよく使われます。日本人は電話をかけた時、普通、最初に自分の名前を言って次の発話につなげるので、「もしもし+自分の名前+ですが」のように言います。<
「はい、わたしですが」の「が」は、そのあとに続く「何かご用でしょうか」が省略されていると考えられます。日本語の話し言葉には、「が」や「けど」の文のあとを言わないですませる傾向があります。「はい、わたしですが。(何かご用でしょうか。)」の( )の部分を言わないことによって、相手が遠慮なく希望や意向が述べられるような働きを持っています。「何かご用でしょうか」まで言ってしまうと、冷たい印象を相手に与えることがあり、相手が言いにくくなるおそれがあります。中国語ではこのような時、「有什?事??」と言うことによって、コミュニケーションを円滑にはかることができますが、日本語では逆効果になります。このように「が」「けど」の後を省略するような話し方は、相手の気持ちを考えたものと言えます。
加納陸人 文教大学教授/『日語』日本側主任編集委員
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