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教材の形態が従来のアナログメディアからデジタルメディアへと変化することで外国語学習にどのような影響を与えるかに関心をもった私は、実証研究の計画を練っていた。あるとき、このことを話題にして学生と雑談していた際、英語の辞書に話が及んでだ。すると、ひとりの学生が「最近こんな便利な辞書をかった」と、鞄から金属製で小振りの平たい箱のようなものを取り出した。そして、「この辞書には印刷辞書と同じ内容が入っているのに、授業で使っていたら「英語を身につけたいなら、そんなおもちゃのような辞書を使っていたらだめだ」とある先生に言われた。と不満そうに言ったのである。それが私とフルコンテンツタイプの携帯式電子辞書との最初の出会いであり、実際、その時の学生の言葉が電子辞書と印刷辞書との比較研究を始めるひとつのきっかけとなったのである。
会話
大山 伊藤さん、ここ数年来、外国語学習の辞書はますますデジタル化していますね。
伊藤 そうですね。今までは「辞書」と言えば、「頁をめくって引くもの」だったけど、コンピューターコーパスが活用されてから、どこにでも持ち運びできる電子辞書が登場しましたからね。
大山 とくにフルコンテンツタイプの電子辞書は教育支援ツールとして一躍脚光を浴びてきまいしたね。
伊藤 大山さん、ホラ、最近、わたしはこんな便利な英語の電子辞書を使っていますよ。
大山 え、そうですか。 その電子辞書には印刷辞書と同じ内容が入っているんですか。
伊藤 ええ、そうですよ。ところが授業で使っていたら、「英語を身につけたいなら、そんなおもちゃのような辞書を使ってはだめだ」とある先生に言われちゃいましたよ。
大山 それは、それは。これ程の電子辞書ブームを目のあたりにしてもまだそんなことを言う人が少なくないんですね。
伊藤 たしかに、辞書そのものが持つ情報量は同じでもその言語情報がデジタル化されたことで、額手効果に影響が出るのではないかという疑問はありませんね。
大山 それはそうですね。印刷辞書と比べると、携帯性を重視しているから、画面の大きに限界があります。そのため、一度にめに入る情報量が限られますからね。
伊藤 その上、液晶画面の文字も印刷の文字とはかなり違いますよ。
大山 そうですね。でも、年々コンテンツも充実してきたし、デザインも良くなってきたし、液晶画面も見やすくなりましたよ。複数の辞書を同時に検索できるなど、機能も向上していますよ。
伊藤 そう言えばそうですね。新しい機種には単語の発音はもちろん、例文まで読み上げる機能がついていますね。
大山 本当に電子辞書はもうなくてはならないものになっていますね。
伊藤 とくに私たちのようなデジタル世代の学習者は分厚くて細かな活字がぎっしり詰まっている印刷辞書は苦手です。やっぱり電子辞書に限りますね。
大山 ところで、一般の学習者は電子辞書をどう思っているんでしょうか。
伊藤 いろいろですね。新聞のアンケートやインタビュー調査によると、「すぐに引けるから便利」と高く評価する一方、「電子辞書で引いた単語はすぐに忘れる気がする」という声もありましたよ。
大山 しかし、何といっても、私たちは物心がついた頃から携帯電話やCD、DVDなどに慣れ親しんできましたからね。電子辞書の便利さには勝てませんよ。
伊藤 まったくそのとおりですね。
(小山敏子「外国語学習と電子辞書」にもとづく)
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